若干紹介が遅くなって、落穂拾いの感もあるのだが、軽く紹介。

David S. Ware
_Go See The World_
(Columbia, CK69138, '98, CD)
- 1)Mikuro's Blues 2)Lexicon 3)Logistic 4)Go See The World
5)Quadrahex 6)Estheticmetric 7)Rapturelodic
- Recorded 1997/12/11-12 at Sound On Sound Studio, NYC.
Produced by David S. Ware and Steven Joerg.
- David S. Ware (tenor sax), Matthew Shipp (piano),
William Parker (bass), Susie Ibarra (drums).

70年代後半から free / loft jazz 界隈で活動する tenor sax 奏者 David S. Ware
メジャー・デビュー作が _Go See The World_ だ。1990年代半ばの _Cryptology_
(Homestead, HMS220-2, '95, CD) や _Dao_ (Homestead, HMS230-2, '96, CD) で
聴かれるような、1980年前後の The Cecil Taylor Unit の1時間程の演奏を10分に
圧縮したかのような演奏から、かなり遠くに来たものだ、と思う。単にメジャーに
なって保守的になったわけでないと思うが。

ちなみに、David S. Ware は 1970年代後半、The Cecil Taylor Unit, _Dark To
Themselves_ (ENJA, '76) や、Andrew Cyrill & Maono, _Metamusicans Stump_
(Soul Note, '78) に参加するなど、bass 奏者の William Parker 同様、Cecil
Taylor 界隈から出てきたミュージシャンだ。

一番の変化を出しているのは Shipp の piano だろうか、冒頭の "Mikuro's Blues"
からして Matthew Ship はコードを弾いているし、ポツポツと抽象的な音を出すより
よりトレモロなどを用いて音数多めに華やかに強めの音で弾いていることが多い
ように思う。おかげで、かなり jazz 的なニュアンスが強くなっている。もちろん、
たたみかけるようなドシャメシャ感のある即興も織り込まれているのだが。

マイナーな旋律を太い音でブロウする Ware の tenor sax も、唸るように重い音を
出す William Parker の bass も、相変わらずだし。Ibarra の drums も手数多く
正確なリズムを繰り出してくるという感じで、むしろ、ドシャメシャとした演奏
だった頃よりも、それぞれの音を楽しめて聴けるようになったと思う。かなり
ふっきれたと思う。

メジャー Columbia Jazz に移籍しても、制作は本人と Steven Joerg。Steven
Joerg は David S. Ware Quartet の前作 _Wisdom Of Uncertainty_ (Aum Fedelity,
AUM001, '97, CD) をはじめ William Parker 界隈の音源をリリースしている
Aum Fidelity レーベルのプロデューサ。そういう意味では。

William Parker / In Order To Survive
_The Peach Orchard_
(Aum Fidelity, AUM010/11, '98, 2CD)
- CD1-1)Thot 2)Moholo 3)Three Clay Pots 4)The Peach Orchard
CD2-1)Posium Pendasem #3 2)Leaf Dance 3)Theme From Pelikan
4)In Order To Survive
- CD1-1,4) Recorded at Context, NYC on 1998/3/20.
CD1-2,3,CD2-4) Recorded at Knitting Factory, NYC on 1997/7/2.
CD2-1) Recorded at Context, NYC on 1998/3/21.
CD2-2,3) Recorded at Alterknit, NYC on 1997/2/7.
Produced by William Parker and Steven Joerg.
- William Parker (bass), Cooper-Moore (piano), Rob Brown (alto sax),
Susie Ibarra (drums); Assif Tsahar (bass clarinet) on CD2-1.

さて、David S. Ware で bass を弾いている William Parker のユニット
In Order To Survive の新作の方も、David S. Ware Quartet と同様の変化を
感じる。2本のブラスもいた sextet だった William Parker, _In Order To
Survive_ (Black Saint, 120159-2, '95, CD) の戦闘的とも言えるインター
プレイから、もっと作曲指向が強くなった、というか。

いろいろな場所での録音のせいか全体としての統一感はないが、William Parker
界隈の音 (David S. Ware Quartet も Matthew Shipp Quartet もそうだが) と
いうことで散漫というわけでもない。予想できる音といえばそうだが、
佳作といったところか。

1999/1/17
嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕