Daniel Humair Trio 草月ホール (青山一丁目) 1999/1/23, 19:00-21:30 - Daniel Humair (drums), Marc Ducret (guitar), Bruno Chevillon (bass) フランスのベテラン jazz ドラム奏者 Daniel Humair 率いるトリオでの来日公演。 むしろ、Marc Ducret と Bruno Chevillon への興味で観に行った。この二人は、 Louis Sclavis / Dominique Pifarely, _Acoustic Quartet_ (ECM, ECM1526, 1994, CD) で共演しており、そこで聴かれる現代音楽に近い即興演奏をこのライヴでもするの だろうか、と予想していた。しかし、実際のところは、フランス版 Gateway (John Abercrombie (g) - Dave Holland (ds) - Jack DeJohnette (ds) とでも いうような演奏だった。guitar の演奏が John Abercrombie ほど素直ではないので、 むしろ変則的な Power Tools (Bill Frisell (g) - Amin Ali (b) - Ronald Shannon Jackson (ds)) に近いか。典型的な guitar trio の演奏だった。そんな演奏の中 では高いレヴェルにあったと思う。いささかソロ演奏に重点が置かれていたように 思うが、それはライブだからかもしれない。 前半4曲は、最初の2曲は様子見という感じで、続いてバラード、で Humair が叩き まくるノリのいい曲で締め。後半も4曲目まで同じような展開で、あれっ、と思った のだけど、ユーモラスな5曲めがあった。アンコールは1回、Humair が叩きまくる 一曲だけだった。 リーダーの Humair は、ダルマを思わせる大柄で丸い可愛いおじいさん、という感じ。 ドラムセットもいささか小さく見える。太っているせいか、少々動きが鈍く見えるし、 手を振りまわすように叩くときなども滑らかに見えないのけれども (ちょっと可愛い 感じすらある)、叩き出すリズムはびしっと決まっていた。フリードラミングという わけではなく、むしろビートをきちっと叩くという感じだ。叩きまくっているときも ドライブ感は、さすがだ。後半、ピコピコハンマーでドラムを叩いたり (これは 可愛いかった)、レガートシンバルを外して鳴らしたり、ちょっとフリーキーな ところを見せたときもあったが。 Chevillon は中では最も地味。弓弾きすることもあるし、ドラム用のブラシや 金属棒で弦を叩いたり、手で胴を叩いたりすることもあったが、基本的にピチカート で複雑なフレーズをも着実に繰り出してくるという演奏を聴かせてくれた。 そんな Humair - Chevillon が繰り出す着実なリズムの上で、目立っていたのが Ducret。スキンヘッドにサングラス、赤い長袖VネックにTシャツ、白いスリムの Gパンに黒のライダーブーツ、といういでたちだけでも目立つのだが。ストラップも 極端に短くギターを脇に抱えるような持ち方で、クネクネと体を動かして多様な音を 繰り出してくる姿がとても目立っていた。エレクトリック・ギターということもある のか、演奏はソロの Marc Ducret, _Un Certain Malaise_ (Screwgun, SCREWU70005, 1998, CD) を思わせるものがあり、ツッカカカというフレーズはこう弾いているのか、 など、興味深く観ることができた。 まだこの trio でのレコード/CDのリリースは無いと思うが、それで Gateway などと 聴き比べてみたいと思う。その一方で、Sclavis / Pifarely との quartet での acoustic な演奏のようなものは、違いが大きいだけに、それではいったいどう演奏 しているのだろう、と思うところもあった。 1999/1/23 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕