Grace Jones _Private Life: The Compass Point Sessions_ (Island, 314 524-501-2, 1998, 2CD) - Produced by Chris Blackwell & Alex Sadkin. Grace Jones (vo), Sly Dumber (ds,synds), Robbie Shakespeare (bg), Barry Reynolds (g), Mikey (Mao) Chang (g), Wally Badarou (key), Uzziah (Sticky) Thompson (perc) - except CD2-14)"Slave To The Rhythms" Produced by Travor Horn. Grace Jones (vo), Louis Jardim (bass g,perc,vo,hi-hat), J. J. Belle (rhythm g), S. J. Lipson (lead g,bass g,key), Bruce Woolley (key,backing vo,g), Andrew Richards (key), etc 80年代初頭、NYから出てきた黒人歌手 Grace Jones のベスト盤CD2枚組が出ている。 ファッション・モデル的という意味で非常に個性的な服装、化粧、髪型をし、 それをさらにデフォルメしたような Jean-Paul Goude による写真、イラストを 使った、強烈なデザインのジャケットで覚えている人も多いだろう。 副題で "The Compass Point Session" と銘打っているように、1980-82年の Compass Point Studio, Nassau で録音された音源からなる編集盤だ。1980-82年の 間に _Warm Leatherette_ (Island, ILPS9529, 1980, LP)、_Nightclubbing_ (Island, ILPS9624, 1981, LP)、_Living My Life_ (Island, ILPS9722, 1982, LP) の3枚の album を残したのだが、ここに収録されている半分近くは 12" single に 収録されたヴァージョンであり、未発表曲も2曲収録されている。ただ、最後の1曲 だけは _Slave To The Rhythm_ (ZTT, GRACE1, 1985, CD) からの曲であり、 Compass Point での session とは関係無い。編集盤としてのまとまりを考えるなら、 この一曲を収録する必要は無かったように思うが。 rhythm & blues (soul / funk) 風のものから、dubwize な reggae のものまで。 Compass Point での録音は、Sly & Robbie をバックにして行われており、その絶妙 なリズムが楽しめる。といっても、いささか冴えなく聴こえるものもあるのは、 20年前の流行物ということもあるかもしれない。その傾向はオリジナル曲のほうに 強くみられるが、その一方で、絶妙なカヴァーのセンスが楽しめる編集盤でもある。 Motown Classics な Marvellets の 1966年のヒット曲 "Hunter Gets Captured By The Game" (Smokey Robinson 作) のような順当な R & B カヴァーはもちろん、 Roxy Music, "Love Is The Drug" や Iggy Pop, "Nightclubbing" (David Bowie 作) のような glam な曲、Jacques Higelin, "Pars" のような French な曲が意外と ハマっているのだ。あと、rock steady の名曲 Dawn Penn, "You Don't Love Mo (No, No, No)" のリズムを使った "Ring Of Fire" という未発表デモ曲とか収録 されているのも、興味深い。 しかし、なんと言ってもこの編集盤の聴きどころは、The Pretenders, "Private Life" (Island, WIP6629, 1980, 12") とそのB面でアルバム未収曲だった Joy Division, "She's Lost Control" の2つの new wave 曲のカヴァー。どちらも未発表の dub version 付きだ。特に、"She's Lost Control" を聴いてみよう。1980年代前半の Black Uhuru、特に _The Dub Factor_ (Island, 1983) で聴かれるような syndrums の音が飛び交う重く dubwise な音空間の中で、Jones が歌うとき、「彼女は自制を 失っている」というのは、Ian Curtis が歌ったようなロマンチックな狂気ではなく、 むしろ、Black SF 的な狂気であるように聞こえる。それの脱構築具合が実に かっこいい。 というわけで、1980年代前半の new wave 的な R & B が楽しめる、そんな編集盤に なっているだろう。 1999/2/21 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕