Various Artists
_When The Dances Were Changing_
(Pressure Sound, PSCD22, 1998, CD)
- 1)Dances Are Changing (Barrington Levy) 2)Dances Are Changing (version)
3)Too Much Backbiting (12" version) (Sugar Minott) 4)Fight Fight (Don Carlos)
5)Worries In The Dance (Frankie Paul) 6)Worries In The Dance (version)
7)Working Class (Ringo) 8)Working Class (version) 9)Fight Fight (Horace Andy)
10)Can't Stop Righteousness (12" version) (The Gladiators)
11)Black Rose (Barrington Levy) 12)Black Rose (version)
13)Army Life (Welton Irie) 14)Tired Fi Lick Weed Ina Bush (Patrick Andy)
15)Smoke The Weed (Michael Palmer) 16)So Jah Jah Say (Barry Brown)
- Produced by Jo Jo Hookim.  Recorded at Channel One.
Backed by Roots Radics.

「ダンスは変わりつつある」と高らかに歌い上げるオープニング Barrington Levy,
"Dances Are Changing" で、ぐっと惹きつけられるこの編集盤は、roots から
dancehall style へ移り変わった1980年前後の reggae を捉えたものになっている。

"Dances Are Changing" で聴かれるような Barrington Levy の歌の節回しだけでなく、
Roots Radics の演奏と Scientist (Hepton Brown) のミックスで作られたアップ
テンポなトラックも、dancehall とはこういうものだ、と思わせるようになって
いると思う。しかし、緩いリズムの曲も多いし、歌詞もコンシャスなものが多い
ようで、roots と dancehall の連続性も感じさせるところがあって興味深い。
もちろん、Dub Syndicate が演奏する On-U Sound の音にも近いものである。
"Dances Are Changing" はもちろん、Ringo, "Working Class" や Barrington Levy,
"Black Rose" のようなアップテンポな曲の方が dancehall らしい曲を中心に
楽しめる内容になっている。version を含めて同じトラックを使った曲を続けて
収録しているのも、嬉しい編集である。

この編集盤は、Joseph "Jo Jo" Hookim の Channel One のレーベルの一つ
Hit Bound の音源を集めたもの。Channel One で Scientist によって録音された
Root Radics のトラック、といえば1980年代前半の dancehall を代表するものだが、
Henry "Junjo" Lewis (Volcano) や Linval Thompson の制作ではなく、"Jo Jo"
Hookim 制作の dancehall 編集盤というのは、ちょっと渋い選択かもしれない。

リリースしている Pressure Sound は roots 期の音源を中心に再発をしている
再発専門レーベルなだけに、dancehall の編集盤のリリースは少々意外だった。
"Jo Jo" Hookim 制作の音源の編集盤としては、Earth & Stone, _Kool Roots_
(Pressure Sound, PSCD11, 1996, CD) や Various Artists, _Well Charged_
(Pressure Sound, PSCD14, 1997, CD) などの1970年代後半の roots 期のものを
リリースしてきているので、その続編として dancehall 期に踏み込んだものとも
いえるかもしれない。

  
Trojan も roots 以前の音源に強いレーベルという印象を受けるが、去年末に
"1979 - Dancehall - 1985" と銘打った1980年代前半の dancehall style な音源を
集めた編集盤をリリースしている。主に傘下の Burning Sound の音源を集めて
いるようであるが。

The Roots Radics Band, _King Tubby's Rockers_ (Trojan, CDTRL416, 1998, CD)
Various Artists, _Dancehall Stylee_ (Trojan, CDTRL416, 1998, CD)
Various Artists, _Let's Go To The Blues_ (Trojan, CDTRL417, 1998, CD)

それぞれ、dub 盤、dancehall の歌/DJもの、lovers の編集盤という感じのもので、
様々なプロデューサの音源が収録されているが、基本的に「Channel One で Scientist
によって録音された Root Radics のトラック」という内容になっている。もちろん
楽しめる内容だし、デザインも僕は気にいっている。

以前のこの頃の音源というと、Greensleeves からリリースされている Scientists の
一連の dub 盤や、編集盤 Various Artists, _Forward_ (Greensleeves, GRELCD060,
1982, CD) のような、Black SF / cartoon なジャケットなことが多く、そのテイスト
も判らないわけでないが、Pressure Sound や Trojan の編集盤はそうではなく、
むしろ、Blood and Fire や Pressure Sound が roots 期の音源の再発で確立した
編集とデザインのテイストとなっているように思う。こういうテイストの初期の
dancehall の音源の再発は、Majestic / Munich の一連の再発CDが先駆けなのかも
しれないが。

こういった dancehall reggae の再発編集CDをよくみかけるようになって、dancehall
も歴史化されはじめたのだなぁ、と感慨深いものもある。実際、既に20年経とうと
しているわけだけれども。

1999/3/3
嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕