Steve Reich _Reich Remixed_ (Nonsuch, 79552-2, 1999, CD) - 1)Music For 18 Musicians (remix) (Coldcut) 2)Eight Lines (remix) (Howie B) 3)The Four Sections (remix) (Andrea Parker) 4)Megamix (remix) (Tranquility Bass) 5)Drumming (Maximum Drum Formula) (Mantronik) 6)Proverb (remix) (Nobukazu Takemura) 7)Piano Phase (Phased & Konfused mix) (D*Note) 8)City Life (Open Circuit) (DJ Spooky that Subliminal Kid) 9)Come Out (remix) (Ken Ishii) 10)secret track - All original music composed by Steve Reich. Executive producer: Amy Coffey. 「私が実際に気付いている曲は1つだけで、それは、ここロンドンにいた3、4年、 いや5年前のことだった。」と彼は認めた。「誰かが私に _Electric Counterpoint_ がサンプリングされている The Orb の "Pink Fluffy Clouds" (sic) のCDを くれたんだ。彼から一緒に The Orbital のCDも貰って、それも聴いたように思うが。 私のレコード会社でそれをかけたら、彼らはこう言ったんだ。『彼らは金持ちか?』」 彼は苦笑いしながら続けた。「私はこう言ったんだ。『だめだ、彼らを訴えては だめだ。』私は嬉しかった。私は単純に嬉しかった。というのは、その時、私は 50代半ば、彼らはおそらく20代くらい、私がしていることと彼らがしていること 関係あるということに彼らが気付いたことが、素晴らしいことだと私は思ったんだ。 もし私がそのような意味で正常な状態へ回帰することに寄与してきたのだとしたら、 私は嬉しい。コンサート音楽とポピュラー音楽の間の壁を突き崩すことを私が 助けてきたのだとしたら、それこそ、物事の正常な状態、物事の健康な状態なのだ。」 (翻訳: 嶋田 TFJ 丈裕) -- Mike Bernes interview with Steve Reich (1996) [1] The Orb が "Little Fluffy Coulds" (_The Orb's Adventures Beyond The Ultraworld_ (Inter Modo, 1991) 所収) で、Steve Reich, _Electric Counterpoint_ (Nonsuch, 79176-2, 1989, CD) がサンプリングされてから8年、出るべくして出た Steve Reich の remix アルバムだ。 ただ、勝手にサンプリングされ techno のレコードとしてリリースされた "Pink Fluffy Clouds" と、この現代音楽のレーベル Nonsuch から remix 盤としてリリース されたこの _Reich Remixed_ とは少々様相が異なるかもしれない。1996年以降、 「実験的」「前衛的」な techno / breakbeats のレコードもリリースも一般化し、 electro-acoustic な現代音楽に近い立場を取るミュージシャン / DJも少なくない。 そのようなDJの一人、DJ Spooky that Subliminal Kid のほとんどビート感の無い remix を聴くと、「政治観としての否定主義象徴が引け解け結びであったとしたら、 芸術哲学としての虚無主義はメービウスの帯であり、アンディ・ウォーホルがその 周回路を完結させた。」という Greil Marcus の言葉[2]を思い出してしまう。 Steve Reich をサンプリングすることで、The Orb, "Little Fluffy Clouds" が 現代音楽を techno 化したのだとしたら、DJ Spooky that Subliminal Kids の remix は techno を現代音楽として祭り上げている。 そういう意味で、僕は Mantronik の重めのベースラインも気持ち良い electro な remix の方が下世話で楽しめるように思う。Crammed Discs の _Freezone_ シリーズの ような気持ち良い ambient な breakbeats が続く Coldcut、Howie B、Andrea Parker の remix も、さすが手慣れていると思うところもある。日本のDJとしては、 Nobukazu Takemura と Ken Ishii が参加しているが、悪い意味で凝っていて、 芸術指向を感じさせてしまうように思う。 ちなみに、アナログは2枚組でクレジット上ではCDに収録されていない1曲を加えた 10曲入り。ただし、僕の買ったCDでは、10曲目がクレジット無しで収録されている。 これがアナログ盤と同じ曲かは不明だが。 参考文献 [1] Mike Bernes, "Electronic Meditations: Interview with Steve Reich", _The Wire_, Issue 153, pp.34-38, Nov. 1996. [2] グリール・マーカス「ガリバーは語る」,『ロックの「新しい波」』 (晶文社, 1984) 所収. 1999/3/7 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕