Louis Sclavis Trio 草月ホール (青山一丁目) 1999/3/13, 19:00-21:30 - Louis Sclavis (bcl,ss,cl), Bruno Chevillon (b), Francois Merville (ds) France の free jazz / improv シーンで活動する Louis Sclavis trio の来日 ツアーの東京公演を観てきた。Label Bleu や ECM のCDから、現代音楽やトラッド の影響も感じる精緻な音、という印象を受けていたが、それから裏切られない 音だった。 ステージに向かって左から Sclavis, Chevillon, Merville という並びで、 trio の場合は管が中央に来ることが多いだけに、ちょっと変則的な印象を受けた。 前半、休憩を挟んで後半、アンコール一回という構成だった。drums と bass の ソロを長くフィーチャーした後半前半はいささか退屈したが、要所は締めていた ライヴだったと思う。 Sclavis は後半冒頭とアンコールを除いて bcl と ss を持ち替えて演奏していたが、 後半冒頭の演奏で見せた連続的に音の高さを変えて cl を吹く技や、アンコール でのユーモラスな cl の音を聴くと、もう少し cl を吹いて欲しかったと思ったが。 ボウッとでもいうアタックの強い bcl の音やキーキー裏返った音を多用しないし、 動きもさほど無いので、見た目はいささか地味。循環奏法も使うし、マウスピース を外してバルブだけで音を出したり、と、それなりに技は使っているけれども、 さりげない。そういう音を必然性があるを思わせるような形で提示している、とも 言えるので、いいのだが。基本的にちょっと癖のある節回しで聴かせるなと思った。 bass の Bruno Chevillon は、Daniel Humair trio のときはいまいちと感じたの だけれど、今回はとても良かった。Sclavis とユニゾンを決めたり、離れたり、 という位置具合がちょうど良かった。特に、Sclavis が bass-line を吹くなんて ことはしなかったが。後半最後の曲ではディストーションをかけたりしていたし、 アンコール冒頭ではプリペアドな演奏もしたが、基本的にフリーキー音は使わずに 手数の多さが特徴だろうか。リードを取るような感もあって、なぜか60年前後の Scott Lafaro や Charlie Haden の bass を連想してしまうこともあった。 今回のライヴで一番のひっかかりは、drums の Merville。自分と波長が合わない だけかもしれないが、いいタイミングで鳴ってくれない。8ビートで叩いている ときはいいのだが、ブラシを使って叩くゆったりめの4ビートや、フリードラミング のソロは、ちょっと辛かった。 前半3曲目のアラブ〜西アフリカ風の曲では、Merville の Darbuka 風のカツカツ いう感じの drums も良かったし、Chevillon の高音連続音、Sclavis の余り音程を 広くとらずにピロピロいう展開も、それにハマって、ライヴの中で最も良かった 瞬間かもしれない。 あとは、アンコール。いかにも free improv な演奏にありがちな フリーキー音 中心のがちゃがちゃした展開から始まり、しれっと、waltz 曲になってしっとり 終わらせる、その落差とユーモア感覚が楽しいアンコール曲だった。と、終わりが 良かったので、そこそこ楽しめたと思えたところもあったのかもしれないが。 1999/3/13 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕