Derek Bailey _Play Backs_ (Bingo, BIN004, 1998, CD) - 1)D for D (Darryl Moore) 2)HK d&b (Henry Kaiser) 3)Resigned (Casey Rice) 4)Please Smile (John Herndon) 5)Tickled 3 (Tied + Tickled Trio) 6)BKB mix (Bundy K. Brown) 7)JF drums (John French) 8)Resigned (Casey Rice) 9)CLB drums (Casey Rice) 10)Sasha (Sasha Frere-Jones) 11)J.O. complete (John Oswald) 12)George (Jim O'Rourke / Loren MazzaCane Connors) free improv. のギター奏者 Derek Bailey が様々なミュージシャンが録音した 「リズム」に合わせて演奏するという企画盤がリリースされている。この企画の 仕掛け人は、NY の post-rock バンド Ui の Sasha Frere-Jones。 似たような企画としては、以前に、Derek Bailey, _Guitar, Drum'n'Bass_ (Avant, AVAN060, '96, CD) というCDがリリースされている。これは、Bailey の 相手をした DJ Ninj が役不足の感もあって、出会いの妙以上のものは無かった。 といっても、Frere-Jones は、この _Guitar, Drum'n'Bass_ を聴いてこの企画を 思い立ったとのことで、ある種の契機を作ったともいえるかもしれない。 果たして、このアルバムは _Guitar, Drum'n'Bass_ よりはるかに面白いものに なっている。楽しめる一枚だ。 drum'n'bass 的な打ち込み / ブレイクビーツの Casey Rice のトラックにしても DJ Ninj に比べ変化に富んだものだし。Henry Keiser の d&b のように、d&b と 銘打ってその音バーツは使っているものの、free improv 的でリズムが組み 上がっていないトラックもある。Bundy K. Brown の場合、リズムが組み上がって いないといっても electronica 風。(こういう、ミュージシャンの背景の違いが 出方も面白いが。) もちろん、提供された「リズム」は打ち込み/ブレークビーツ ばかりではない。後半になるにつれて脱線していく感じもあるのだけれど、 John French は生ドラムらしき演奏だし。"CLB drums" での Casey Rice は玩具 パーカッションだろうか。 こういう「リズム」を背景に、ではなく、一緒に、Derek Bailey は electric / acoustic guitar を駆使して演奏していくわけだが。やはり、多くは相手に 「合わせる」ことの無いカキカキいう guitar 演奏で、それが、ギターの音を 「リズム」の上物として終わらせない強さの原因かもしれない。そんな中にある だけに、"CLB drums" (Casey Rice) では、はっと感傷的なフレーズが耳に飛び 込んでくる感も映えるし。 最後の2曲は、「リズム」が guitar 演奏で、若干雰囲気が違う。"J.O. complete" (John Oswald) では、Bailey は演奏していない。ライナーノーツで Bailey は 「そのままにしておいた方が良いと思ったから」と言っている。そういう意味では 何も演奏しない、という形で共演したとも言えるが。こういう、断片的にカキカキ いう guitar の演奏だと、Bailey も共演し辛そうな気もするが。 あと、最後の "George" (Jim O'Rourke / Loren MazzaCane Connors) では、 O'Rourke と MazzaCane Conners の弾く緩く音数少ない「ロマンティック」な メロディーを背景に、Derek Bailey が落ち着いた声で electric guitar に ついて語る、というもの。渋いて美しいエンディングだ。 「リズム」を作っているのが、Chicago や NY の post-rock 勢が中心だったり、 と顔ぶれは _Extreme Possibilities_ 的であり、予想される範囲だ。かといって、 techno / break-beats 畑の大物をいきなり連れてきても、単に出会いの妙の 繰り返しになってしまっていたような気もする。ま、繰り返しても必ずしも悪い わけでないが。ま、堅実な企画だろうか。ちょっと、Derek Bailey の演奏を remix する、という方向性も思い付いたが、それでは、Thurston Moore, _Root_ (Lo Recordings, LCD11X, '98, CD) とあまり変わらなくなってしまうか。 ちなみに、このCDをリリースしている Bingo は Ui の Sasha Ferre-Jones の レーベル。1998年から活動し始めたようで、まだ、リリースは多く無いが、 Ui と Stereolab の共演プロジェクト Uilab のレコード _Fires_ (Bingo, BIN002, 1998, CDS) (US盤。UK盤は Duophonic Super 45s。) を リリースしていたレーベルである。 1999/3/21 嶋田 TFJ 丈裕