Taha - Khaled - Faudel _1, 2, 3 Soleils_ (PolyGram Video, 059 416-2, 1998, VHS[SECAM]) - 1)Khalliouni Khalliouni (instrumental) 2)Menfi (Taha, Khaled & Faudel) 3)Eray (Faudel & Khaled) 4)N'ssi N'ssi (Khaled) 5)Ida (Taha) 6)Baida (Faudel) 7)Omri (Faudel & Taha) 8)Voila Voila (Taha, Khaled & Faudel) 9)Indie (Taha & Khaled) 10)Chebba (Khaled, Taha & Faudel) 11)Sahra (Khaled) 12)Madeeh (Khaled) 13)Wahrane Wahrane (Khaled) 14)Les Ailes (Khaled) 15)La Camel (Khaled & Faudel) 16_Abdel Kader (Khaled, Taha & Faudel) 17)Bent Sahra (Taha & Khaled) 18)Aicha (Khaled & Faudel) 19)Tellement N'Brick (Faudel) 20)Didi (Khaled, Taha & Faudel) 21)Ya Rayah (Taha, Khaled & Faudel) - Rachid Taha, Khaled, Faudel. - Produced by Steve Hillage. Recorded live at POPB (Bercy) on 1998/9/26. 1980年代前半から Carte De Sejour というバンドでアラブ風 rock のバンドで 活躍してきた Rachid Taha、「Rai の帝王」と言われる大スター Khaled 、 最近 Paris 郊外から出てきた若い Rai の歌手 Faudel の3人が共演した去年の 9月26日の _1, 2, 3 Soleils_ のビデオが出ている。(フランス版なので SECAM 方式なため、日本で観るためには NTSC 変換が必要だが。) 会場は Paris の Bercy 。万単位で客が入りそうな大きなハコだ。ステージの上 には、何十人からなるオーケストラ/バンドが並んでいる。クレジットによると、 オーケストラは France と Egypt の混成のよう。音の制作は、最近の Rachid Taha の制作をしている Steve Hillage。元 Gong というより、System 7 という techno ユニットでの活動で知られ、Rachid Taha も techno 風の音作りをして いたのだが、ここではむしろ、去年に制作した Rachid Taha のアルバム _Diwan_ (Barclay, 1998) の延長のように生演奏を中心に音を組み立てている。この France と Arab のアンサンブルの共演も評価されたようだが、大きなハコでの ライヴもあるのか、少々大袈裟に過ぎる気もする。あまり大きなハコでのライヴは 好きではないこのもあるのか、もっとシンプルな音構成で小さいハコでやって 欲しかったようにも思う。しかし、舞台装置は全くミニマルで、歌手やソリストに スポットライトを当てる、といった演出しかない。それは良かったように思う。 歌手もダンスするわけでなく、それほど派手なアクションはない。自分が歌わない ときは、舞台から下がるくらいだ。しかし、声高くよくコブシの回る Faudel、 もっと太めの歌声の Khaled、しゃがれた感じでコブシを回さない Taha、という 異なった歌声の組み合わせも、互いを補い合うような良さがあったように思う。 実は、Rachid Taha や Khaled は1980年代からCDではまめに追いかけているものの、 ヴィデオででも動く彼らを観たのは初めて。それだけでも感動するものがあった。 想像していた通りだが、特に Rachid Taha がカッコイイ。Carte de Sejour 時代 から Taha を追いかけて10年余、やっと観られたと、感慨もひとしお。ビデオには 楽屋での様子や、簡単なインタヴューも収録されているのだが、フランス語が 判らないので、ここについては、なんとも説明しがたい。Sting (ex-The Police) が楽屋に現れた、というくらいは判るが。 このヴィデオを観ていて最もぐっときたのは、Taha, Khaled, Faudel の3人で Rachid Taha の名曲 "Voila, Voila" を歌ったところだ。Rachid Taha 一人ではなく 3人で、それも満員の巨大なホールで、あからさまに移民排斥に反対する歌を歌って いるのだ。そして、多くはアラブ系移民と思われる客もそれにのっているというのも、 感動的だ。実際、ライヴの中でも最も盛り上がっていたときの一つだったと思う。 いつもにこにこ愛想笑いしている Khaled もこの歌のときだけはきりっと厳しい 顔をして歌っているのも、とても印象的。 去年のアルバム Rachid Taha, _Diwan_ は、Taha の自作曲は "Ida" と "Aiya Aiya" だけで、他の曲は全てアラブのポピュラー音楽のカヴァー曲だった。このライヴの オープニングの "Menfi" やアンコール (ビデオでは) ラストの "Ya Rayah" は _Diwan_ の中の曲だ。音楽監督も Steve Hillage で、_Diwan_ のコンセプトを拡大 して、Khaled や Faudel も引っ張りだして Rai を中心にアラブ歌謡を歌う、という 音楽的なコンセプトを感じることもあった。そういう意味では、_Diwan_ のラストの Taha の歌 "Aiya Aiya" を歌って欲しかった。アルジェリアのテロ状況を歌った歌で、 その暴力に倒れた Rai のミュージシャンたちへ捧げられた歌になっていたようにも 思うので。 もちろん、Rai をアラブ歌謡と一緒に語ってしまうのも難があるし、このライヴでは Khaled のソロで Rai の歌を歌う所も多く、Rai を中心に据えたライヴだったと思う。 あと、ビデオでは収録されていないのだが、ライブでは Frank Sinatra, "My Way" で 知られる "Comme d'Habitude" を歌ったそう。どうしてこの歌なのか判然としないが、 それなら、歌った "Voila Voila" その歌の中に織り込まれている Charles Trenet, "Douce France" を歌って欲しかったようにも思う。 と、勝手な希望をいろいろ言ってしまうが、Rachid Taha, Khaled, Faudel の共演は、 France 発のアラブのポピュラー音楽を追いかけていた身には夢の共演だ。特に、 Rai のミュージシャンとしては活動してこなかった Rachid Taha と、Rai の大スター Khaled の共演が実現したのは、Rai も変わりつつあることを感じさせるように思う。 その一方で、Khaled と並ぶ Rai のスター Mami が参加していないのが残念でもある。 Taha, Khaled, Faudel が契約しているのが PolyGram 系のレーベルなのに対し、 Mami は EMI 系のレーベル (Virgin) だったために、PolyGram の意向で Mami が 排除された、という事情があったようで、実際、いささか商業主義に過ぎるイベント だという批判もあるよう。しかし、_Les Inrockuptibles_ 誌によると、1999年には 晴れて Taha, Khaled, Faudel に Mami も加えての "1, 2, 3, 4 Soleils" での 海外ツアーが実現するそう。これは、無敵なラインナップだ。ぜひとも、日本にまで 回ってきて欲しいものだ。 このビデオに収録されたライヴは、音だけCD 2枚組でリリースされている。 CD 1枚にしたダイジェスト盤もある。2枚組は以下の通り。 Taha - Khaled - Faudel _1, 2, 3 Soleils_ (Barclay, 559 593-2, 1998, 2CD) - CD1-1)Khalliouni Khalliouni (instrumental) 2)Menfi (Taha, Khaled & Faudel) 3)Eray (Faudel & Khaled) 4)N'ssi N'ssi (Khaled) 5)Ida (Taha) 6)Baida (Faudel) 7)Omri (Faudel & Taha) 8)Voila Voila (Taha, Khaled & Faudel) 9)Indie (Taha & Khaled) 10)Chebba (Khaled, Taha & Faudel) 11)Sahra (Khaled) CD2-1)Madeeh (Khaled) 2)Wahrane Wahrane (Khaled) 3)Les Ailes (Khaled) 4)La Camel (Khaled & Faudel) 5)Abdel Kader (Khaled, Taha & Faudel) 6)Bent Sahra (Taha & Khaled) 7)Aicha (Khaled & Faudel) 8)Tellement N'Brick (Faudel) 9)Didi (Khaled, Taha & Faudel) 10)Ya Rayah (Taha, Khaled & Faudel) - Rachid Taha, Khaled, Faudel. - Produced by Steve Hillage. Recorded live at POPB (Bercy) on 1998/9/26. CDで聴くと、拍手の音が大きく聞こえるのが興味深い。手拍子がリズム・セクションの 一つを構成しているような。それから、シングルカットもされている。 Taha - Khaled - Faudel _Abdel Kader (Live A Bercy)_ (Barclay, 563 102-2, 1998, CDS) - 1)Abdel Kader (Live A Bercy) 2)Menfi (Live A Bery) - Produced by Steve Hillage あと、ライヴでは歌われたのに、ビデオ、CDいずれにも収録されなかった "Comme D'Habitude" の、スタジオ録音によるCDSも出ている。 Taha - Khaled - Faudel _Comme D'Habitude_ (Barclay, 563 506-2, 1999 CDS) - 1)Comme D'Habitude 2)Daiman - Produced by Steve Hillage まるで1990年前後のリズムの曲で、この企画でどうして、という感も否めないのだが。 1999/3/28 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕