Sleater-Kinney _The Hot Rock_ (Kill Rock Stars, KRS321, 1999, CD) - 1)Start Together 2)Hot Rock 3)The End Of You 4)Burn, Don't Freeze 5)God Is A Number 6)Banned From The End Of The World 7)Don't Talk Like 8)Get Up 9)One Song For You 10)The Size Of Our Love 11)Living In Exile 12)Memorize Your Lines 13)A Quarter To Three - Produced by Roger Moutenot. - Carrie Brownstein, Corin Tucker, Janet Weiss 前作 _Dig Me Out_ (Kill Rock Star, KRS279, 1997, CD) が、予想以上の注目を 浴び、もはや ex-Riot Grrrl ということを強調する必要も無いような気がする、 Olympia, WA 界隈から出てきた女性 rock バンド Sleater-Kinney の4thアルバム。 Corin Tucker のもう一つのバンド Cadallaca に持っていかれたか、前作のポップ さが後退し、いささか地味になったかもしれない。単調な punk 流の曲に戻った わけでないが、もっとキャッチーなメロディやドライブ感のあるリズムの曲が あってもいいような気がする。音的に斬新なことを試みてはいないが、それを指向 したバンドではないし、それは期待していないのだが。 _Dig Me Out_ の最高の魅力だった、Tucker の歌声は金切声直前に抑えられた歌声と Carrie Brownstein の少し甘く低めの落ち着いた歌声が重なり合うことろが、 少なくなった。こういった所が、この作品の多声性を削ぎ、いささか単調なもの にしているかもしれない。といっても、"Burn, Don't Freeze"、"One Song For You" といった歌に、その多声性を聴くことができるし、その瞬間だけでも充分な力が あるように思うが。 前作 _Dig Me Out_ のスリーブは、The Kinks, _Kink Kontroversy_ (1965) の パロディだった。この _The Hot Rock_ も、どうも既視感があるのだが、まだ 元ネタがわからない。しかし、写真 (CDブックレットの裏拍子) を見ていると、 三人とも以前に比べて綺麗になったというか垢抜けた感じなって、ファンとしては ちょっと複雑な気分になってしまった。 _Dig Me Out_ が話題になったことにより、かつて Go-Go's や Bangles が、そして 最近では Lucious Jackson が歩んだように、メジャーに移籍し普通の女性バンドに なってしまうかとも思ったが、この新作も独立系 Kill Rock Stars からのリリース。 e-zine _Addicted To Noise_ (http://www.addict.com) に載った長大なインタヴュー (1999/3) で、その理由として「私たちを育て、支持してきてくれたコミュニティ、 コンテキストから切り離されたくない。」と言っている。別の話でも「私たちは ライヴバンド」とも言っており、全体的にいささか保守的と感じるほど folk 指向の 発言が多い。このような指向が Sleater-Kinney の魅力を生んでいると思う一方、 ファン層が広がらない、少なくとも日本で盛り上がらない理由にもなっている ようにも思う。 1999/4/11 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕