Mekons _Me_ (Quarterstick, QS53CD, 1998, CD) - 1)Enter The Lists 2)Down 3)Narrative 4)Tourettes 5)Flip Flop 6)Gin & It 7)Back To Back 8)Come And Have A Go If You Think You're Hard Enough 9)Men United 10)Mirror 11)Far Sub Dominant 12)Whiskey Sex Shack 13)Thunder 14)Belly To Belly - Produced by Mekons - Steve Goulding (drums), Susie Honeyman (fiddle), Sarah Corina (bass), Sally Timms (vocals), Tom Greenhalgh (guitar,synth,vocals), Jon Langford (guitar,piano,vocals), Rico Bell (accordion,vocals), Ken Lite (words,navigation), Rebecca Gates (vocal); Terrie from The Ex (guitar) on 13. 1970年代末から活動を続ける post-punk バンドの、去年にリリースされた新作。 Leeds から Chicago へ拠点を移し、現在のラインナップになってから5年で5枚目の アルバムになる。1980年代中頃に country を基本とした現在の alt country と でも言うスタイルを確立したわけだが、1980年代後半は主に reggae / dub に影響を 受けた、比較的明るく伸びやかな音処理が特徴だった。Mekons が最もノッていた 頃ではないかと思う。 1990年代に入って、いろいろごちゃごちゃと試みるようになったのだけれども、 どうも出来不出来の差が大きくなったように感じる。Chicago を拠点に移しての 一枚目、_I "heart" Mekons_ (Quarterstick, QS10CD, 1993, CD) は、そんな中で ポップさも魅力的な作品だったが。他の作品は、正直に言って掴み所の無い作品 だったように思う。 この新作 _Me_ は、1990年代の Mekons の作品の中ではかなり良い作品だろう。 やはり country が基調ではあるが、残響の使い方が psychedelic な感じで、 Bongwater とかを連想させるところもある。_I "heart" Mekons_ もそうだった けれども、ときおり打ち込み風のくっきりしたリズムと、太めのベースライン ― 1990年代の techno 〜 breakbeats 的なものでなく、1980年代 new wave ぽい ものだけれど ― このアルバム全体の魅力的な pop さを作り出していると思う。 "Gin & It" (と、その instrumental である "Back To Back") は、特に、1980年 代後半に聴かれたような伸びやかさを感じる歌で、とても気にいっている。 その歌詞から題名を取った "Narrative" のようなアップテンポ気味の曲も良いし。 もちろん、オープニングの "Enter The List" や "Mirror" の psyche pop 風の 曲も面白い。 もちろん、punk 原理主義的とでもいう態度がその pop さの裏に忍ばせてある。 1980年代からの盟友 The Ex の Terrie が久々にゲストで参加していたりするし。 というわけで、久々の Mekons の秀作。まだまだ頑張りつづけて欲しいバンドだ。 Mekons _United_ (Polk Museum of Art, ISBN0-9649621-1-X / Quarterstick, QS34CD, 1996, CD+book) ちなみに、このアルバム _Me_ のアルバムは、この展覧会のカタログと、それに 付いていたCDということになる。もう3年前のリリースになるものだが、輸入盤店で 出回っているところをみかけることもなく、個人輸入でやっと入手したので、 紹介しておこう。 カタログからすると、Lakeland, FL の美術館で 1996/4/27-6/30 の間開催された この展覧会は、いわゆる Mekons の回顧展のようなものとおもわれるのだが、 付属のCDは過去の録音の音源の編集ではなく新録である。とりとめない曲が多くて、 あまり魅力的ではないのだが。 カタログの方は、Mekons のスリーヴ・ジャケットなどに使われたアート・ワークは もちろん、あちこちの雑誌などに書かれた Greil Marcus や Lester Bangs による Mekons についてのエッセーや、元メンバーの Colin Stewart の小説が載って いたり、と、それなりに楽しめるものがある。 そのカタログの Christoph Gerozisis による "Introduction" で、Mekons や Gang Of Four といった、1970年代末に Leeds 一派と呼ばれたバンドのメンバーが 大学で師事していた T. J. Clark に触れられている。これによると、T. J. Clark は、 1960年代末、暫くの間 Situationist International のイギリスでのメンバーの 一人だったことがある、とある。それが、Leeds 一派に引き継がれたとでもいう ような書き方で、いささか、T. J. Clark と Leeds 一派の関係を過大評価している ような気もするのだが、それは美術展のカタログということもあるのだろうか。 もちろん、カタログの acknowledgement にも T. J. Clark の名前は挙がっている。 1999/4/27 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕