Thurston Moore, Evan Parker, Walter Prati _The Promise_ (Materiali Sonori, MASOCD90106, 1999, CD) - 1)The Promise 2)Is 3)Our Future 4)Our Promise 5)Are 6)Children 7)All Children 8)A Path Between Creativity And Reflexion (multimedia track) - Thurston Moore (el. guitar), Evan Parker (soprano and tenor sax), Walter Prati (live electronics,6 string el. bass) - Produced by Walter Prati & Massimo Mariani. Evan Parker Electro-Acoustic Ensemble, _Toward The Margins_ (ECM New Series, ECM1612, 1997, CD) や、Evan Parker & Lawrence Casserley, _Solar Wind_ (Touch, TO:35, 1997, CD)、Evan Parker with Noel Akchote, Lawrence Casserly and Joel Ryan, _Live At "Les Instants Chavires"_ (Leo, CDLR255, 1998, CD) と、 最近、頓に electro-acoustic / multimedia 作品への傾倒を見せている Evan Parker。 この Walter Prati 制作の multimedia 作品に、Sonic Youth と Thurston Moore と 共に参加している。このプロジェクトは、Electro-Acoustic Ensemble 的というより、 むしろ、Lawrence Casserly らとのプロジェクトに近いように思う。 オーディオ・トラックとして7曲収録されており、ピロピロいう Parker の soprano sax やキリキリいう Moore の el. guitar が live electronics で変換された繊細な 1曲目から、グシャーと歪んだ Moore の guitar が炸裂する7曲目まで、それなりに 楽しめるが。 むしろ、面白いのは Walter Prati 制作のマルチメディア・トラック。2画面あって、 一つが落葉が重なりあったような画面、もう一つは東京の地下鉄の路線図を真似た ような画面だ。落葉や路線図の駅に音が割り当ててあり、それをマウスでクリック すると、Evan Parker の sax の音や Thurston Moore の guitar の音の断片が鳴る、 というのが基本的な仕組みだ。この手のオマケが付いた enhanced CD はそれなりに あったけれども、この enhanced CD のソフトが面白いのは、さらに、録音ボタンと 再生ボタンが付いていること。自分の鳴らした音を記録しておき、それを再生し ながらさらにマウスで演奏を重ねることが可能なのだ。操作も単純で凝ったことは できないけど、ちょっとした live electronics ごっこという感じで、意外と面白い。 ちなみに、Windows、Macintosh いずれでも動作するよう。 ちなみに、このCDのリリースをしているイタリアのレーベル Materiali Sonori は、 もともと Les Disques Du Crepuscule レーベルのミュージシャンの音源をリリース する "Greetings" シリーズから始まったレーベル。その後、Recommended 系と 言われるような avant rock、free improv.、現代音楽、ambient などもリリース するようになっている。web site は http://www.matson.it/。 Philipp Wachsmann / Paul Lytton _Some Other Season_ (ECM, ECM1662, 1999, CD) - Recorded 1997/10. Produced by Steve Lake. - Phillipp Wachsmann (violin,viola,live electronics), Paul Lytton (percussion,live electronics) Evan Parker は参加していないが、Evan Parker Electro-Acoustic Ensemble の メンバー2人による electro-acoustic 作品が、やはり ECM からリリースされている。 生音も生かされていて free improv. な面も楽しめるし、ECM ならではの音というか、 深いところから響くような音が巧く撮られているように聴こえるのが良い。 B.G.M. として流していてもいいような音だ。 逆に言えば、Thurston Moore, Evan Parker, Walter Prati, _The Promise_ で 聴かれるような el.-guitar のグシャーと潰れたような"汚い"音とかは楽しめない。 いや、けたたましくなるときも無いわけじゃないけど、それでも綺麗な音なのだ。 violin や viola の音のせいもあるのだろうが「現代音楽」的。しかし、ECM の 現代音楽のシリーズ New Series に入っていないが。) アクセント程度でいいから泥臭い音が入っていると、また、違うのかな、と思うが。 これは、Evan Parker の2つの electro-acoustic のプロジェクト (Electro-Acoustic Ensemble と Lawrence Casserly らとのプロジェクト) の住み分けにも繋がるようで、 ちょっと気になるのだが。 1999/5/3 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕