Jean-Marie Straub, Daniele Huillet & Thierry Jousse _Entretiens_ (Rectangle, REC-ESH1,2,3, 1998, 3LP) - Recorded 1997/2/23 _Cahiers du Cinema_ 誌の現編集長の Thierry Jousse が、モンタージュによる 物語展開を抑えた映画で知られる Jean-Marie Straub と Daniele Huillet の コンビの監督に対して行った約2時間のインタヴューをLP 3枚に収めたもの。 LPの面の切れ目など、話の流れと関係なく切っている感じがして、なかなか、 ラフな編集が成されている。 簡単なライナーノーツによると、彼らの話題は野蛮なリベラリズム (le liberalisme sauvage)、国際化 (mondialisation)、マーストリヒト条約下のヨーロッパ (l'Europe de Maastricht)、発展の暴力 (la violence de la croissance)、 人間性の揺籃 (le berceau de l'humanite)、離反 (la dissidence)、非服従 (l'insoumission)、ヘルダーリン (Hoelderlin)、歴史 (l'histoire)、ステレオ (la stereo)、ウルリケ・マインホフ (Ulrike Meinhof)、音楽 (la musique)、 撮影録音 (l'enregistrement)、映画 (le cinema)、財産 (l'argent)、労働の方法 (les methodes de travail)、シェーンベルク (Schoenberg)、新作『近い将来』 (_Du Jour au Lendemain_ (1996)) に渡っているとのこと。特に映画の話ばかり しているわけではないようだ。 しかし、フランス語でなされている会話であり、僕のようにフランス語が 聞き取れない人にとっては、聞き通すのは少々辛いレコードかもしれない。 特に、これ以上の手がかりとなるようなテキストや写真が載ったブックレットが 添えられているわけではないからだ。淡々と話しているわけでなく、むしろ、 声高になることが多い。机をバンバンと激しく叩く音が入ったり。(なぜか犬の 鳴き声も聞こえたり。) 主に Huillet が話しているが、Straub の方がきつい 口調になりやすいように聞こえる。ライナーノーツには、「これは討議された (波紋を起こされた) 即興だ」 ("C'est d'improvisation qu'il s'agit") と 書かれているが、言葉の壁がある者にとって、Rectangle の他の即興のリリース ほどの印象が残るとは、残念ながら思わない。フランス語の聞き取れる人の 実況解説入りとかで聴くと、また、違う印象が得られるかもしれないが。 というわけで、フランス語が聞き取れるマニア向けのリリースといったところか。 1999/7/11 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕 _ _ _ その後、このレコードに収録されているインタビューをまとめた日本語の概要を 入手することができた。 _Entretiens_ のインタヴューが 収録された時が 1997/2/23 ということもあるの だろうが、 その直前の 1997/2/12 の Pasqua - Debre 法不服従の署名から話題が 始っており、時代を感じさせる内容だったということがわかった。「ヨーロッパの 要塞」のような話も、 欧州統合と裏腹の関係にあったこの移民排斥の動きを意識 したものだろうし。やはり、同時代的に内容を理解していれば、印象もだいぶ 違ったように思う。 政治の話ではなく映画の話だと、音使いの話が面白かった。Jean-Luc Godard の 音使いが嫌いな一方、Jacques Demy は彼らとは違うなりに評価しているとか。 「ステレオ・サウンドの気違いじみた利用の仕方」と Jacques Tati を絶賛したり。 直接的な話より、こういう比較から、映像と音の関係の考え方がなんとなく見えて くるような気がした。 2000/4/23 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕