Kocani Orkestar _Gypsy Mambo_ (Materiali Soniri, MASOCD90114, 1999, CD) - 1)Nikol 2)Alabina - Munur 3)Altin Oro 4)Gypsy Stacato 5)Agonija 6)Ebru Melody 7)Turkish Pop 8)Mambo 9)Istambol Kocek 10)Neat 11 11)Orhonava Tehnika 12)Oro Indi 13)Pembe Pembe 14)Techno Kocani - Recorded and Mixed by Erol Asimov, Sasko Velkov, Bilkan Latifov at Studyo Kocani, 1999/1. - Naat Veliov (tp), Orhan Veliov (tp), Hikmet Veliov (bass tuba), Ismail Seliev (sax,cl), Vinko Stefanov (accordion), Mendu Saliev (tuba), Dalkran Asmetov (tuba), Redzaim Juseinov (ds), Ali Memedovski (darbuka); Erol Asimov (sax), Bilkan Latifov (cl), Zakir Ramadanov (tuba). Balkan の Gypsy Brass Band である Kocani Orkestar (Macedonia 出身) は、 3rd アルバムでも、前作、_L'Orient Est Rouge_ (Cram World, CRAW19, 1997, CD) で聴かせたシャープな乗りは、同様。もちろん、11/8拍子 (2+2+3+2+2) や 7/8 (2+2+3) 拍子、9/8 (2+2+2+3) 拍子といった変拍子のリズムの曲 (Oro / Cocek) もあって、回転系のノリをもちろん楽しむことはできるが。しかし、前作ほどは 目立たなくなっているように思う。あと、曲がちょっと短めで展開が速い感じもする。 しかし、その結果、むしろ、ボボボボとタンギングを多用してぐいぐい引っ張る tuba のベースライン、カンカンいう darbuka のビートからなる、リズムの シャープさが引き立っているかもしれない。ビービーというペラペラな音を出す zurla がここではフィーチャーされてないのが、ちょっと残念か。 前作では、中国国歌『東方紅』をカヴァーしていたのだが。このアルバムでも、 題名通り mambo のリズムの曲 ("Mambo") もやっていたりする。フィーチャー される clarinet が東欧風で、リズムとの組み合わせが面白いが。しかし、注目は なんといっても、"Agonija"。"Ya Rayah" (Abderrahmane Amrani a.k.a. Dahmane El Harrachi) という pre-Rai の Algeria のポップ曲で、Rachid Taha が _Diwan_ (Barclay, 539953-2, 1998, CD) で取り上げシングルカットして、 ヒットした曲である。去年の Rai の大イベント Taha - Khaled - Faudel による コンサート _1, 2, 3 Soleils_ (PolyGram Video, 059 416-2, 1998, VHS[SECAM]) でもアンコール曲に選ばれている。実は、France で開催された地中海音楽の フェスティヴァル Mediterraneennes de Ceret で、Khaled と共演 (一緒に曲を演奏) しており、おそらく、そのときのレパートリーの一つが "Ya Rayah" だったと 思われる。そして、こういう曲をアルバムでもさっと取り上げるセンスもさすが だと思うし、Arab 風の曲がうまくブラスバンド風にアレンジされていて、実に カッコいい。さすがだ。 そんな曲の由来を知らなくても、Balkan 出身ということも知らなくても、キレの いいリズムのブラスバンドとして楽しめると思う。前作の _L'Orient Est Rouge_ (Cram World, CRAW19, 1997, CD) と併せてお勧めしたい。 ちなみに、このCDのリリースをしている Italia のレーベル Materiali Sonori (web site は http://www.matson.it/) は、もともと Les Disques Du Crepuscule / Crammed Discs 界隈のミュージシャンの Italia でのライヴ音源をリリースする "Greetings" シリーズなどをリリースしてきたレーベル。その後、avant rock、 free improv、現代音楽などもリリースするようになっている。Kocani Orkestar は 前作の _L'Orient Est Rouge_ を Crammed Discs 傘下の Cram World からリリース しており、その関係もあって、_Gypsy Mambo_ を Materiali Sonori からリリース することになったと思われる。逆に言うと、Crammed Discs / Cram World や Materiali Soniri からリリースするバンド、という意味で、Kocani Orkestar は 典型的な Gypsy Brass Band とは違うかもしれない、と思うところもある。 Kocani Orkestar の西欧でのデビュー作 _A Gypsy Brass Band_ (Long Distance, 592324, 1994, CD) は Frnce の Ethnic 系レーベル Long Distance からリリース されており、最近それを聴くことができたのだが、その後の2作ほどアレンジが 洗練されていないし、リズムのキレも良くないからだ。女性歌手がフィーチャー された曲も収録されているので、それは面白いと思ったが。 Balkan Gypsy Brass Band は、Emir Kusturica の一連の映画 (特に _Underground_) で有名になったと思うけれども、_Gypsy Mambo_ のライナーノーツによると、 Kocani Orkestar は Emir Kusturica (dir.) _The Time Of Gypsies_ に出演 しているという。映画のクレジットには見られないのだけれども。 Balkan Gypsy Brass Band のCDも少しは最近は出回るようになっていて、 Kocani Orkestar の他にも聴くことができる。半年くらい前に出回っていたもの だけれども、ついでに軽く紹介。 Fanfare Ciocarila _Radio Rascani_ (Piranha, CDPIR1254, 1998, CD) - Produced by Henry Ernst and Helmut Neumann. Recorded at Studio Electrocord, Bucarest, Romania, 1997. - Oprica Ivancea (scl,as), Ioan Icancea (scl,vo), Costica "Cimai" Trifan (tp), Radulescu Lazar (tp,vo), Nicusor "Pusac" Cantea (tp,perc), Craciun Icancea (as), Constantin "Sulo" Calin (tenor horn,vo), Laurentiu Mihai Icancea (baritone horn), Constantin "Pinca" Cantea (tuba), Monel Trifan (tuba), Constantin "Gisniac" Ursu (large drum) Fanfare Ciocarila は、Romania の Gypsy Brass Band。Kocani Orkestar と 比べると、horn も使うところもあってブラスがちょっと軽めで、かなりテンポが 速い演奏である。一曲の長さも平均2分余りと短く、かなりスラッシーだ。 といっても、darbuka を使っていないこともあってか、それほどリズムが シャープに聴こえるわけでない。それに、テンポの速さはちょっと面白いけど、 変拍子系の曲が無いので、タテノリっぽく、そこが少々飽きがちかもしれない。 Emir Kusturica (dir.), _Underground_ で使われた曲も (タイトルは変えられて いるけれど) 演奏しているし、それなりには楽しめる内容にはなっているとは思う。 1999/9/6 (1999/9/5) 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕