Jon Wozencroft _Touch & Fuse - The Aftershock of The Invisible_ (Faculdade de Belas Artes de Porto / Touch, TO:15, 1999, book) - 27cm(h)-21(w), pp.66, hard back. UK のグラフィック・デザイナー、Jon Wozencroft の作品集が出ている。 1998年4月の Portogal の Faculdade de Belas Artes de Porto での3日間の プロジェクト _The Power Of Transition_ のために制作された本で、 hard back 版が500部、paper back 版が1000部の限定本となっている。 (ISBN は振られていない。Touch のメール・オーダーで入手することができる。) 題名の _Touch & Fuse_ の通り、Wozencroft が全面的に手掛けているUKの 実験的電子音響系のレーベル Touch でのパッケージのグラフィック・デザインと、 グラフィック・デザインの雑誌 _Fuse_ に寄稿したエッセーを中心に、この本は 編集されている。もちろん、それ以外のソースも用いられているが。 例えば、Scala や Mark Van Hoen など Wozencroft のデザインを主に使う ミュージシャンの作品は、Touch レーベル以外のリリースについても、この本に 収録されている。Sub Rosa レーベルでのデザインも多く収録されているが、 その一方で、Jon Wozencroft が全面的にパッケージのデザインを手掛けている レーベル、Swim~、(CD以降の) Piano での作品を「収録する余地が無かった」 (序文より) のは、少々残念だ。(Swim~ のものは収録されているが。) Wozencroft のデザインは、色や幾何的な形状を強調し、時には、ブレたり ピントがずれた画像やCRTに投影した粗い画像によってテクスチャーを強調した、 抽象的な画像を用いたデザインが特徴である。また、同じポイントのサンセリフの フォントを用いた、ミニマルな感じのタイポグラフィも特徴にしており、 そのデザインは一見して彼のものとわかる。1990年代の実験的な Techno / Electronicaのレーベルのグラフィック・デザインに大きな影響を与えてもいる。 この本では、そんな Jon Wozencroft のデザインの世界を楽しむことができる。 お勧めだ。 エッセーのほうは、デザイン論というよりもメディア論いった感じのもの。 短めで軽い感じがするのは仕方ないか。 Wozencroft はデザイナーとしての活動だけでなく、エディター / ライターと しての活動も目立つ。特に、1980年代以降のUKで影響力を強く持ったグラフィック ・デザイナー Neville Brody の作品集 _The Graphic Language Of Neville Brody_ (Thames & Hudson, 1992) と _The Graphic Language Of Neville Brody Part 2_ (Thames & Hudson, 1994) を手掛けていたのは、有名だ。 また、デザイン関係だけでなく、音楽に関しても、Wire, _Behind The Curtain: Early Works 1977 & 1978_ (EMI, 7243 8 32403-2, 1995, CD) や、Joy Division, _Heart And Soul_ (London, 828 968-2, 1997, 4CD-box) といったアンソロジーで、 そのパッケージのデザインだけでなく、選曲やライナーノーツで参加している。 1999/9/12 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕