In Embrace は 1980s 前半に Leicester, England から出てきたバンドだった。 In Embrace と共に活動していた Eyeless In Gaza, Bron Area のように、 脱パンク期に John A. Rivers が制作していたバンドと同じく、マイナーな感の メロディ、ぶっきらぼうな感じの歌い方、独特の残響を使った guitar の カッティングと軽めのドラムスからなる薄目の音作りなどを特徴にしていた。 In Enbrance は John A. Rivers の制作で、2枚のアルバム _Passionfruit Pastels_ (Glass, GLALP001, 1982, LP) と _Too_ (Glass, GLALP004, 1983, LP) を残している。 また、_Wanderlust 1982-1984_ (Glass, GLEX102, 1986, LP) という初期の Glass 時代のシングル曲を含めたベスト盤アルバムも残している。Bron Area と並び、 初期の Glass レーベルを代表するバンドだった。 この2枚のアルバムをリリースした後、彼らは Cherry Red から2枚、また Glass に 戻って2枚のシングルをリリースした。そして、予定されていた 3rd アルバム _Songs About Snogging_ をリリースすることが出来ないまま解散してしまった。 (それも、制作の John A. Rivers に金を払えなくなってしまったため、という。) この後期の In Embrace の活動は前期と異なりかなり洗練された音作りになった だけに、この時期をまとめたアルバムがリリースされなかったのは残念である。 ここで紹介するのは、この後期にリリースした4枚のシングルである。 In Embrace _Shouting In Cafes_ (Cherry Red, 12CHERRY84, 1985, 12") - A1)Shouting In Cafes A2)Chocolates For Breakfast B)Shouting In Cafes (original long version) - Recorded in 1984/4. Produced by John A. Rivers at Woodbine. A1) Re-thought and re-mixed 1984/12. - Gary Knight (vocal,keyboard), Stephon (acoustic bass guitar), Clive Dove (electric guitar), Richard Formby (acoustic guitar), John A. Rivers (piano), Leo Casey (cello), Tim Parkins (violin), Elisa Richards (backing vocal). Cherry Red からの第一弾シングルのタイトル曲は、ドラムレスでストリングスと 女性コーラスを大幅にフィーチャーした曲で、音がぐっとクリアになり厚くなった。 その甘い旋律はイージーリスニング的である。編集された短いヴァージョンは歌もの という感じだが、特に最初のテイクは8分近い長さでインストゥルメンタル的に展開 する部分が長く、それもイージーリスニング風の感じを強くしている。 当時はイージーリスニング的な試みも新鮮だったし、当時、シングルを買って、 よく聴いていたのを覚えている。 ちなみに、このシングルを最後に、Sonic Boom と Spectrum を結成するために、 Richard Formby が脱退した。 In Embrace _This Brilliant Evening_ (Cherry Red, 12CHERRY90, 1985, 12") - A)This Brilliant Evening B1)The Darkest Horse 2)This Brilliant Evening (an instrumental mix) - Recorded in '84/4. Produced by John A. Rivers at Woodbine. - Gary Knight (vocal), Clive Dove (guitar), Joby Palmer (ds), John A. Rivers (keyboard), Elisa Richards (backing vocal). 続く Cherry Red からの2枚目のシングルは、ロマンチックなメロディとくっきりした リズムを持ったポップ曲。良くプロデュースされていると思うし、ある程度、当時の Electric pop に影響を受けているように思う。エコーとノイズゲートを使った ドラムの音は、今聴くと1980s前半っぽい気がするが。 Tears For Fears のようなメジャーのポップバンドとあまり変わらなくなってしまった ということもあるかもしれないが。特にこのシングルがヒットすることもなく、 In Embrace は Glass レーベルに出戻ることになった。 In Embrace _A Room Upstairs_ (Glass, GLASS12051, 1986, 12") - A1)A Room Upstairs 2)A Room Upstairs (an instrumental version) B1)My Worst Behaviour 2)Red Blue Eyes - A)Produced by John A. Rivers at Woodbine, Leamington Spa on '86/9/29,30. B)Produced by Peter Becker and Engineered by Malcolm Rivett-Carnac at Ace in Bugbrooke on '86/5/26. - Gary Knight (vocal), Clive Dove (guitar), Amanda Lydon (vocal), Peter Becker (keyboards,bass) しばらく間が開いて、レーベルが Glass に戻っての12シングルは、前作 "This Brilliant Evening" と同様のポップ曲。佳作といったところか。 このシングルで、次ぎのアルバム _Songs About Snogging_ が予告されている。 In Embrace _What's Got Into Me?_ (Glass, GLAEP106, 1987, 12") - A)What's Got Into Me? B1)The Screaming Song 2)Brand-New-Life 3)Darling Angel Sugar Honey - A)Produced by John A. Rivers. B)Produced by Peter Becker. 続いてリリースされたこのシングルは、傾向がうって変わって、タイトル曲は reggae 調の曲。B面では Young Marble Giants のカヴァーも演っており、 Young Marble Giants 〜 The Gist の試みを、In Embrace ならではの形で再解釈 しようかという感じのシングルだった。 このシングルで、アルバム _Songs About Snogging_ はもっとリズムの幅が広がった 興味深い作品になるのではないかと期待したのだけれど。結局、アルバムをリリース することなく、バンドは消滅してしまった。 しかし、盟友だったバンド、Eyeless In Gaza も、_Back From The Rain_ (Cherry Red, BRED69, 1986, LP) を最後に活動を停止。1986年以降のUKのポップ シーン (_NME C86_ で紹介されたような新しい Guitar pop、Rave と連動した Manchester pop) の中では、彼らののようなポップが、そのまま活動を続けることも 困難だったと思う。ある意味で、1980s前半ならではのポップだったと思う。 1999/10/3 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕