横濱ジャズ・プロムナード'99 横浜市内各所 1999/10/9,10 http://www.city.yokohama.jp/me/ycf/yjp/ 毎年秋に開催されている横濱ジャズ・プロムナードの第7回。いつも、free jazz / improv. に焦点を当て会場を一つに絞って観ていたのだが。今年は、もっと気楽に 観ることにして、会場を渡り歩いた。確かに、演奏を聴いている時間が短くなるが、 その分だけ街を楽しめたと思う。港の見える丘公園の山手ゲーテ座にしても、 関内の開港記念会館にしても、戦前のものと思われる洋館で、建築を見るという 意味でも興味深かったし。そういう楽しみ方も良いだろう。 まず、皮切りに観たのは、元町を抜けて港の見える丘公園にある、ゲーテ座のこれ。 Manden Foli 山手ゲーテ座 (石川町) 1999/10/9, 12:30-13:30 - Mamoudou Diabat (doundoun,cow bell), 大儀見 元 (djembe), 外山 明 (sangban,cow bell,balafo), 武田 広行 (djembe), Taeko Diabat (kenkeni), 奈良 大介 (djembe) Guinea 出身で現在は日本在住の Mamoudou Diabat 率いる、トラディショナルな パーカッション・アンサンブル。比較的定期的に都内でライヴをしているそうだ。 Diabat という名前からして、西アフリカの Manding 社会のグリオ (西アフリカの 吟遊詩人) の血筋の人だと思われるが、Kora (弦楽器) を弾きながら歌うような ことは無かった。打楽器と掛け声のような歌のみ。バックの doundoun, sangban, kenkeni (bass drum) 3人がカンカンいう cow bell と併せてリズムをキめて、 フロントの djembe (hand drum) 3人がソロを取る、という構成。たまに、balafo (木琴) を入れる程度。6/8のリズムの曲もあるが、アンサンブルが打ち出す ポリリズムの、スウィングするようなノリが最高に良かった。 続いて、同じハコで、うって変わって。 内橋 和久 山手ゲーテ座 (石川町) 1999/10/9, 14:00-15:00 - 内橋 和久 (guitar,daxophone) 内橋 和久 のソロの即興。ループを使って多重に音を繰り出すのだが。フリーキー な音の間から沸き上がってくる、美しいメロディや音響が印象的なソロだった。 ふと、ECMレーベルから出てくるような guitar 演奏を連想したり。あっという間に 終わってしまった感じもあったのだが。 sabar のアンサンブルがランドマークホールであると知ったので、バスでランド マークタワーへ移動。開始時間を確かめて、インド料理店で食事。17時から、 ドックヤードで 内橋 和久 + ダンスラボ という即興演奏+ダンス・パフォーマンス をやっているようだったので、そこに向かうも、その隣すぐで、David Claypatch a.k.a. That Amazing Guy が大道芸をちょうど始めたばかりだったので、 そちらを観ることに。野毛や静岡のようなフェスティヴァルでは30分程度で 終わるが、今日は、1時間かけてやっていた。けど、全く間延びした感じでは ないのが、さすがだ。 で、18時頃、ランドマークホールへ。 ソフィ・ケル・ギ・サバール ランドマークホール (桜木町) 1999/10/9, 18:30-19:30 - Ndiaye Rose, Youssou Ndiaye, Almu Ndiaye Rose, etc sabar というのは Senegal のトラディショナルなパーカッションというか、その アンサンブルのことを指す言葉らしい。conga を小さ目にしたような、というか、 djembe をスリムにしたような hand drum だ。手と撥の両方を使い、一つの sabar から高音と低音を繰り出す。djembe / doundoun のような階層ほど明確なものはない。 そのせいか、最初のうちはあまりポリリズミックに聴こえなかった。最初のうちは、 リズムが合わずにアンサンブルが乱れ気味で、ダメだったせいもあるかもしれない。 ちなみに、ソロを取るのはアフリカ系とおもわれる中心メンバー3人で、その両翼に 日本人の演奏者が6人という構成。sabar の数が多いだけに、音の大きさは迫力満点。 Senegal と最初に見た Manden Foli の Guinea とは隣国なわけで、ある意味で、 どちらも Manding / Griot の文化の影響下にあるのかもしれないが。こうして 聴きくらべると、やはり近いなぁ、と思うところもあった。その一方でポリリズムの 強調のされかたは、Guinea の方が強烈だな、と思った。 それから、Brazil の黒人音楽のルーツはもっと中央アフリカ寄りだが、Samba の パーカッション隊とも共通するように感じた。単に、まだ、リズムの差異に鈍感な だけかもしれないが。 またバスで移動して、今度は関内へ。到着したときは既に始まっていたが。 Rova Saxophone Quartet 開港記念会館 (関内) 1999/10/9, 19:30-20:30 - Bruce Ackley (ss,ts), Steve Adams (as,ss), Larry Ochs (ts,ss), Jon Baskin (bs,as) 1977年に San Francisco, CA, USA 結成された free improv / jazz 系の4人組。 即興といっても、非調性的なフレーズをノンビートで吹くというようなものでは なくて、個々のフレーズはイデオマティックだし、むしろ、作曲されている部分も 多そう。途中でサインを出しながらソロをやりとりするような曲もあって、 ゲーム的な要素も取り入れているよう。全体としては、4人のフレーズが交わら なくなってしまう、というか、勝手に並行して進行するような局面が多くあって、 それが面白く感じるときと、観念的でつまらなく感じるときの、落差が大きかった。 初来日だが何作かCDを持っているし、その予想から大きく外れるような音では なかった。 今年は、西アフリカのパーカッション・アンサンブルが2バンド出ていて、 free improv / jazz な演奏だけでなくそちらの演奏も楽しめたのが、良かった。 来年以降もっと続けて欲しいし、Latin や Brazil へも広げていって欲しい。 あと、欧州のトラディショナルな音楽と jazz の接点という方にもスポットを 当てて欲しい。Balkan の Gypsy Brass Band などは jazz fest. でも盛り上がる ように思う。土曜の夜あたりに、techno 〜 breakbeats との接点を求める (例えば、Carl Craig の Innerzone Orchestra のような。) クラブイベント とかやると面白いと思うが、それは今の状況では望みすぎなのかもしれない。 1999/10/10 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕