Mor Thiam
_Back To Africa_
(Justin Time, JUST126-2, 1999, CD)
- 1)Worosodon 2)Yaral Sa Doom 3)Doudou N'Diaye Rose 4)Xamleen Zamme
5)Djembe 6)Modou Modou 7)Tassu 8)Sangara 9)Daan Sa Doole
10)Meeting In Dakar
- Produced by Mor Thiam and Cheikh Tidiane Tall.
- Recorded and mixed 1998/11/19-23 at Xippi Studios in Dakar, Senegal.
- Mor Thiam (vocals,djembe,sabar), Chaikh Tidiane Tall (keyboards,guitars),
N'Diaye Samb Mboup (vocals), Fatou Talla N'Diaye (vocals),
Mbaye Dieye Faye (lamb,sabar,djembe), Baboulaye Sissokho (kora),
D. D. Jackson (keyboards), Papa Samb Sour (drums), Lamine Diallo (djembe),
Yamar Thiam (tama,tassu,Senegalese rap), Manane Thiam (tama),
Doudou N'Diaye Rose (lamb,thiol,nder), Thierno Koite (tenor sax),
Abdoul Aziz (sabar,talmbatt)

Mor Thiam は Senegal 出身、Dogon 族の歴史伝承者 (ライナーノーツでは Griot と
あるが、Manding 族ではない。) の流れを汲むとのことだが、1960年代には渡米、
US を拠点に African percussion 奏者として活動している。1990年代に入って、
Don Pullen や Hamiet Bluiett のような free 〜 loft 系の jazz ミュージシャン
と共演をしてきている。その Thiam の初めてのリーダー作がリリースされた。
題名通り「アフリカに戻」って、Youssou Ndour の Dakar, Senegal にあるスタジオ
で録音、制作されている。

いわゆる jazz 的な曲は一曲も無く、西アフリカの伝統的な percussion を使った
アンサンブルの曲と、kora や African percussion に併せて electric guitar や
keyboard、sax を使い歌もフィーチャーする African pop 的な曲が、ほぼ交互に
収録されている。

African percussion のアンサンブルは、Mor Thiam も、(クレジットで見る限り)
djembe と sabar を持ち替えていることからわかるように、全くの伝統的なもの
ではない。ライナーノーツによると、その曲のソースとして、Senegal だけでなく、
Gambia, Mali, Ivory Coast, Guinea, Sierra Leone といった西アフリカ諸国の
ものを用いているよう。といっても、それを聴きわけるだけの知識は無いのだけど。
音が薄いような気もするが、生音のような体感は望むべくもないだろう。djembe や
sabar のような hand drum のシャープな響きが作りだすポリリズムが楽しむこと
ができると思う。

その一方で、African pop 風の曲の方は、ちょっと詰めが甘いような気もする。
Thiam 自身がリード歌手なのだが、歌のキャッチが弱い。ブックレットに載った
バンドの写真では Youssou Ndour も一緒に載っている。Ndour のバンドのメンバー
も参加しているのだが、せっかくなら Ndour のような歌手をフィーチャーして
pop に作りこんで欲しかったようにも思う。ヒットしている pop 歌手をフィーチャー
するのは、契約の都合上、難しいのかもしれないが。この詰の甘さが、アルバム
全体を少々弱いものにしているかもしれない。
  ＿  ＿  ＿

リーダー作の初リリースに合わせて過去のお勧めアルバムを紹介。

World Saxophone Quartet and African Drums
_Metamorphosis_
(Elektra / Nonesuch, 79258-2, 1991, CD)
- 1)Holy Man 2)Lullaby 3)Metamorphosis 4)Su Mama Ah Zumu 5)Africa
6)Ballad For The Black Man 7)Masai Warriors Dance 8)Love Like Sisters
9)Lo Chi Lo 10)Feed The People
- Produced by Peter Scherer with World Saxophone Quartet.
- Oliver Lake (as,ss,fl), David Murray (ts,bcl), Hamiett Bluitt (bs),
Arthur Blythe (as), Mor Thiam (gmba,gabala,gum gum,rain stick,bgnn),
Chief Bey (asiko,signal drum,shakere),
Mar Gueye (limbe,m'beum m'beum,gring m'biss m'biss),
Melvin Gibbs (electric bass).

僕が初めて Mor Thiam を知ったのは、free 〜 loft jazz のトップ saxophone
奏者が集まった World Saxophone Quartet (1970s後半から活動している) との、
この共演盤でだった。

1990sに入ってのオリジナル・メンバーの Julius Hemphill が抜けた後の World
Saxophone Quartet はぱっとしないのは確かなのだが、それでも、その直後、
代わりに、やはり loft jazz シーンで活躍してきた Arthur Blythe を迎えての
このアルバムは、Mor Thiam ら3人の Senegal 出身の African percussion
奏者を迎え、祝祭的とも感じるノリの良い仕上がりになっている。少々荒削りな
感じが、活き活きした感じを生んでいるかもしれない。

この World Saxophone Quartet と African percussion 奏者3人の共演は、その後、
ほぼ同じメンバー (Arthur Blythe ではなく現在のレギュラーの John Purcell) で
World Saxophone Quartet, _Four Now_ (Justin Time, JUST83-2, 1995, CD) を
リリースしているが、こちらは、いささか洗練に過ぎるように思う。

また、Mor Thiam は、最近は、World Saxophone Quartet の Hamiett Bluitt、
piano 奏者 D. D. Johnson と、Bluiett - Jackson - Thiam というトリオで活動
しており、2枚のアルバム _Same Place_ (Justin Time, JUST109-2, 1998, CD) と
_Join Us_ (Justin Time, JUST124-2, 1999, CD) を残している。

1999/10/12
嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕