Albert Mangelsdorff Movin' On _Shake, Shuttle And Blow_ (Enja, ENJ9374-2, 1999, CD) - 1)Do You Like Pastrami? 2)Bolghatty Dreams 3)Shake, Shuttle & Blow 4)Barrel Without Bottom 5)Up And Push 6)Tri-Van-Drumming 7)Saxobonia 8)01/799 12 12 - Recorded 1999/1/3,4. A production of Swiss Radio DRS 2. - Albert Mangelsdorff (trombone), Bruno Spoerri (alto & soprano sax,synchrophone,very nervous system), Christy Doran (electric guitar), Reto Weber (drums,percussion,ghatam,djembe) 1960s後半から欧州 free jazz / improv. の代表的なビックバンド Globe Unity Orchestra を率いていた trombone 奏者 Albert Mangelsdorff の新しいバンド Movin' On の録音がリリースされた。MPS, FMP, Japo といったレーベルに残された 1980年代初頭頃までの音源を遡って聴くことはあっても、最近の録音に興味を 引かれることなどなく、正直に言って僕にとって Mangelsdorff は過去の人だった。 それだけにこの新作はちょっとびっくり。 Spoerri の sax との2管とはいえ、bass を抜いて electric guitar を入れた編成。 A.B.D. Trio (Ray Anderson (tmb) - Han Bennink (ds) - Christy Doran (ds)) のような似たような bass-less guitar trio 編成に慣れた Doran が、ここでも、 リバーブを効かせループを多用した guitar のフレーズで、リードを取ったり リズムを刻んだり、時間軸も伸縮自在に動いて、全体を締めている。 Mangelsdorff とは1990年代に入って percussion orchestra を率いての共演もある Weber は hand drum (djembe) を叩いているときの方が多いのだが、トントン スッタタと刻むリズムは、良い感じにノリを作り出すときもあるのだが、時々、 間を埋め過ぎて単調に感じるときがあるのが惜しい。おかげで、時間的伸縮に 関してはちょっと硬直した印象を受ける。Spoerri は sax だけでなく computer も 扱っており、それが繰り出すピコピコズンズンいう打ちこみと、djembe の対比は 面白い。Doran の electric guitar と Spoerri の computer に djembe が からむタイトル曲 "Shake, Shuttle And Blow" や "Tri Van Drumming" など、 管抜きでも面白いと思う。 Mangelsdorff の trombone と Spoerri の sax ― synchrophone を含めて ― は、 フリーキー音を使ったり、electro-acoustic で派手に音加工をしたりせずに、 飄々と旋律を吹いている。おかげで、即興ではなくて作曲の色の濃い作品に聴こえる。 Spoerri は soprano を使っているときの方が良いように思うが Jan Garbarek っぽく なり過ぎるきらいもある。trombone は、ときにメロディを、ときに brass band 風 にベースを取って、動きまわっているが。それでも2管が高音と低音を住み分けて いるように聴こえるときもあり、それは惜しいかもしれない。 コード楽器が guitar ではなく piano で、electro-acoustic は使ってないが、 同様の編成だった、かつての Broetzmann, Van Hove, Bennink plus Mangelsdorff, _Live In Berlin '71_ (FMP, CD34/35, 1971/1991, 2CD) をふと対比したくなる ところもあるのだけど、このように、sax と trombone が暴れまくるような展開も 少しはあっても面白いようにも思う。しかし、Movin' On のように淡々とした 展開に徹するというのも、1990年代らしいのかもしれない。単に Mangelsdorff も 枯れただけかもしれないが。 ちなみに、Movin' On は1990年から活動しており、当初は guitar の Christy Doran ではなく、cello の Ernst Reijseger が入った編成。残念ながら未聴なのだが、 Mangelsdorff - Spoerri - Reijseger - Weber, _Movin' On_ (Elite, CDJ76357, 1990, CD) という録音を残している。もっと acoustic な音なのだろうか。 _ _ _ Enja からの trombone のリーダー作をもう一枚。 Ray Anderson Pocket Brass Band _Where Home Is_ (Enja, ENJ9366-2, 1999, CD) - 1)Bimwa Swing 2)The Alligatory Abagua 3)The Mooche 4)I Mean You 5)Where Home Is 6)Peace In Our Time 7)The Pineapple Rag - Recorded 1998/11. Produced by Ray Anderson. - Ray Anderson (trombone), Lew Soloff (trumpet), Matt Perrine (sousaphone), Bobby Previte (drums). Han Bennink (ds)、Christy Doran (ds) と組んだ A.B.D. Trio での自在な free improv. 演奏だけでなく、より jazz 的な Bass Drum Bone や、funk 的な Slickphonics や Alligatory Band など、自在な演奏を聴かせてくれる Chicago を拠点に活動する trombone 奏者 Ray Anderson の新しいプロジェクトは、 New Orleans 風の brass band。それも、brass 3本に drums 1人のコンパクトな 編成で、まさにポケット。ほとんどミニマル。音はミニマルというより、茶目っ気 たっぷりという感じのもの。 しかし、小編成だからといってしょぼいことは全く無い。Alligatory Band の 仲間であり、Gil Evans の big band でアレンジを手掛けていたこともある Lew Soloff の trumpet が良いのはいいとして。sousaphone (巨大な horn の ような金管楽器) が気持ち良く鳴っている。tuba とは微妙に違った低くて柔らかい 音色が良い。Matt Perrine はこの作品で初めて聴いたと思うが、New Orleans Nightcrawlers という New Orleans jazz / R&B / cajun の band の主要メンバーだ。 演奏は brass band の演奏をずらすようなユーモラスな雰囲気もあって、楽しい 作品になっている。 1999/11/7 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕