Various Artists _South African Rhythm Riot - The Indestructible Beat Of Sowet Volume 6_ (Earthworks / Stern's, STEW38CD, 1999, CD) - 1)Vuli Ndlela (Brenda Fassie) 2)Sabothoka Isidudla (Ihashi Elimhlophe) 3)Oyi Oyi (Arthur) 4)Banamanga (Bhekumuzi Luthuli) 5)Sum' Bulala (Brenda Fossie) 6)Thul'ulalele (Pure Magic with Rebecca) 7)Zeq'umthetho (Isu Labasa) 8)Hamba Sathane (Pure Gold) 9)Sixolele Baba (Chicco) 10)Ngiyakuthanda Papa Wemba (Brenda Fossie with Papa Wemba) 11)Sihambile (Mahlathini & The Mahotella Queens) 12)Ipiki Nefosholo (Bhekumuzi Luthuli) 13)Mosadzi Wa Tshikuma (Chicco) 14)Girls (Aba Shante) 15)Mama Ka S'bongile (Soul Brothers) Apartheit 時代の1980年代から South Africa は Johanesburg の (もちろん、 Apartheit 時代の) 黒人居住区 Soweto (South West Township) のポピュラー音楽を 紹介してきた好編集盤シリーズ _The Indestructible Beat Of Soweto_ の第6集が 出ている。 1970〜80年代の Soweto のポピュラー音楽といえば、Mahlathini & Mahotella Queens や Soul Brothers の演奏していたような mbaquanga (township jive, Zulu jive) と 呼ばれる、つんのめるようなビートと軽快なリズムギターが特徴の音楽が広く知られ、 _The Indestructible Beat Of Soweto_ もそれを中心に編集されていたのだけれど、 この第6集は、大きく様変わりしていて、ちょっと驚き。そして、それがとても面白い のだが。 なんといっても、リズムギターの音色が大幅に後退し、ぐっと打ち込み度が増して いるのだ。オープニングの女性歌手 Brenda Fassie など、歌詞が英語でないことを 除けば、英米の打ち込みベースの黒人のポップとそれほど変わらない。歌唱もコブシ とか効かせるわけではなく、さらっと soul 流儀だし。彼女は1980年代から活動を 始め、1986年には Billboard Hot Black single にチャートインしたこともある そうだが。"Vuli Ndlela" は1999年の大ヒット曲なのだそうだが、ベースラインが、 もろ Depeche Mode, "I Just Can't Get Enough" なのも愛敬か。Zaire のポップ スター Papa Wemba とのデュエット曲も収録されているし、彼女の音作りを手掛けて いる Chicco の曲も収録されている。特に音楽のスタイルの名称は無いようだが。 あと、kwaito もしくは kwaito-ragga と呼ばれるスタイルの音楽が数曲収録されて いるのだが、これは、house、ragga、あと hip-hop あたりがかなりいい加減に折衷 されている都市型ダンス音楽といえるようなもの。女性歌手や ragga 風味の男性MCが フィーチャーされるのだが、英語ではないので、その微妙な訛り具合も面白いし。 アフリカや中南米のポピュラー音楽を欧米の club music のDJが remix するという ことは少なくないのだが、それ比べて欧米向けに洗練しようとしていない、というか テイストが違うのが良い。ちょっと変わったネタを探しているDJなら、これはねらい目 かもしれない。ちなみに、Earthworks はこの kwaito を特集した編集盤をリリース する予定があるそう、これはとても楽しみだ。 こういう house や hip-hop、ragga の影響がこれだけストレートに現れるというのも、 もちろん、Apartheit とそれによる国際的孤立状態の終焉というのもあると思うが、 South Africa が英語圏であり英米のポピュラー音楽を受容しやすい、ということも あるように思う。gospel というスタイルの音楽も数曲収録されているのだが、これに しても、America の gospel とは別だとは思うが、やはり打ち込みで soul 風の コーラスをフィーチャーした音楽だし。(Brenda Fassie も gospel が一番近いの だろうか。) その一方で、打ち込みでありながら従来のポピュラー音楽と共通するような軽快な リズムギターを残した Maskanda (modern Zulu traditional music と説明がある。) も収録されている。もちろん、mbaquanga も2曲収録されており、その打ち込みの中の 人力グルーヴも新鮮。dancehall reggae 〜 ragga の音源の中に、ぽこっと early reggae の音源が交じっているような感じもあって、その関係も興味深いと思うけれど。 Mahlathini & Mahotella Queens の音源は、亡くなったばかりの Mahlathini 追悼と いう意味も込めて、1970年代の音源が収録されている。 1999/12/19 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕