Iness Mezel _Wedfel_ (Silex, Y225077, 1999, CD) - 1)Wedfel 2)Ado 3)Aya Hedat 4)Agour 5)Ifassen 6)Awah 7)Laaven Yissnau 8)Laaven Yissnau 9)Lahvev 10)Taiga 11)Aya Hedat 12)Our Yi Nouu 13)Slassen Kan 14)Wadfel - Realisation par Iness Mezel. - Iness Mezel (vo), Malika Messaoudi (vo), Nora Abdoun (bendir,darbukka,karkabouch,djembe), Tatchi Gomez (Latin American percussions), Christina Azuma (guitar), Walter Weir (guitar), Luiz De Aquino (guitar), Andrei Svetlov (bass), Claude Dibongue (guitar), Klifa Rachedi (parcussions). 2年前に Iness Mezel, _Deux Voix Berberes Au Rythme Des Sons Du Monde_ (Silex, Y225066, 1997, CD) をリリースしていた Fatiha & Malika Messaoudi 姉妹の Iness Mezel の新譜。このアルバムでは、Fatiha が Iness Mezel を名乗る ようになっているが。 彼女は Algeria の非 Arab 系の少数民族 Berberes (そのうちの Kabylia) の流れを 汲むようであるが、Paris を拠点に活動している。1stアルバムもそうだったのだが、 その音楽性はあまりルーツに根差したものではないように思う。歌詞は Berberes の 言葉のようだが、音楽はむしろ Latin 〜 Brazil からの影響が強いように思うし、 bendir や darbukka といった打楽器の音色を除くと、Northern Africa というか Arab の影響を感じるところは多くない。同じ Algeria 発のポピュラー音楽 rai と 共通するところはほとんど無い。ギターやベースの使い方は、ちょっと fusion ぽくなるところもある。その無国籍な感じが面白いとは思うし、僕はそれが気に いっているが。女性の歌声にしても (ルックスも) 綺麗で洗練過ぎて、いかがわ しさが少ないのが惜しいかもしれない。 曲の作りは、歌詞を含めて、シンガーソングライター (SSW) 風なのだが。その歌詞の 半数が女性が男性の所有物とされるような婚姻制度に対する批判になっているのが 興味深い。Mali (Western Africa) の Oumou Sangare, "Wassoulou" にしても そうだが、このようなテーマを歌詞に持つ Africa 出身の女性SSWが欧州で注目を 浴びることが多いように思うし。それに、彼女のルーツに拘らない音楽性も、 そういう歌詞のテーマと関係するようにも思うからだ。そして、そういうところが 実にモダンなのだと思う。 ちなみに、Kabylia の Berberes 出身といえば、Djur Djura という女性歌手がいて、 その1980年前後の録音が _Adventure In Afropea 2: Voice Of Silence - The Best Of Djur Djura_ (Luaka Bop, 9 45211-2, 1993, CD) で聴くことができる。 やはり、伝統的な婚姻制度を批判するような歌詞といい、Arab の影響をあまり 感じさせない音作りといい、ここらに Iness Mezel の音楽的なルーツがあるのかも しれない、と思うところもある。 1999/12/19 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕