『ゴースト・ドッグ』_Ghost Dog - The Way Of Samurai_ - France / Germany / USA, 1999, color, 116min. - Written & Directed by Jim Jarmusch. Music by RZA. - Forest Whitaker (Ghost Dog), John Tormey (Louie), Isaach De Bankole (Raymond). 妙にゆったりしたテンポで進むギャング映画、と言っていいのかどうかも謎なのだが。 このテンポが完全に僕のツボにハマってとても楽しめた映画だった。 ギャングに雇われたサムライかぶれの黒人の殺し屋 Ghost Dog が主人公なのだが、 その敵役のギャングも間抜け憎めないし、殺し屋も腕利きの割には人がいいし。 『葉隠』からの言葉が字幕で映画の中に何回も挿入されるのだが、それは主人公の 行動を説明しているかのようではあるのだが、そのシリアスな言葉に比べて、画面や シーンの進行のテンポはもっととぼけた感じにズレている。そのズレが、武士道など の持つイメージを良い感じに、つまり笑いを伴うように、異化してくれていている。 それが、この映画の最大の魅力だと思う。 もちろん、夜の街中を車で流すシーンのゆっくりした時間・空間の流れなども、 Jarmusch の映画ならではの雰囲気で、それも好きなのだが。Jarmusch ならではの 演出といえば、ディスコミュニケーション。それぞれ英語と仏語しか解しない Ghost Dog と Raymond (Haiti 不法移民のアイスクリーム屋) の間のやり取りが 最高に面白かった。アイスクリーム屋台から流れる調子っぱずれた音楽といい、 とても人が良さそうな感じといい、この映画の中で僕が最も気に入った キャラクターは、Raymond のように思う。 Jarmusch の映画での楽しみの一つに音楽もあるわけだけれども、RZA (Wu-Tang Clan) の hip hop も絶妙のゆるいテンポで、映画にぴったりだった。しかし、それ以外の 選曲も絶妙で、夜の街を車で流すときに流れた、(1980年前後のだと思う) Dance Hall reggae チューンも良かったし。なんといっても、Andrew Cyrille のポリリズミックな ドラムにJimmy Lyons の歪んだサックスが絡む free jazz の演奏が流れたときか、 最高にかっこよかった。 Jarmusch は、_Stranger Than Paradise_ (1984)、_Down By Low_ (1986) の頃が 最も面白かったと思っていて、一時は興味から外れつつあったのだけれど、前作、 _Dead Man_ (1995)、そしてこの _Ghost Dog_ と、また面白くなってきたように思う。 2000/1/2 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕