『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』_Buena Vista Social Club_ - Germany / USA / France / Cuba, 1999, color, 105min. - Directed by Wim Wenders. - Ry Cooder, Ibrahim Ferrer, Ruben Gonzalez, Eliades Ochoa, Omara Portuondo, Compay Segundo. USA の guitar 奏者 Ry Cooder が制作した、Havana, Cuba で現地の忘れ去られた ミュージシャンを集めて1950s前後の son / danzon / bolero の曲を演奏した _Buena Vista Social Club_ (World Circuit / Nonsuch, 79478-2, 1997, CD+book) は、mambo や cha cha cha のようなノリの良いリズムとは違った、 緩く深みのある Cuba の音楽を広く伝えるのに充分なものだったと思う。 実際、1997年にこのアルバムはヒットし、それ以降、World Circuit / Nonsuch がこの手の音源のリリースをシリーズ化しただけでなく、様々なレーベルが 便乗するかのような企画のCDをリリースするようになっている、ちょっとした ブームになっていると思う。 この映画は、このアルバムのヒットを受けて、翌1998年に、Havana, Cuba での _Buena Vista Social Club_ に続く World Circuit 制作の音源の録音の様子は もちろん、Amsterdam や New York でのライヴを捉えた音楽ドキュメンタリー映画。 監督は、_Paris, Texas_ (1984) 、_The End Of Violence_ (1997) で音楽を Ry Cooder に任した Wim Wenders 。 主に Sony HandyCam で撮影されたという感じで、粒が粗く少々露出不足というか 退色した感じの画面が、一時は忘れ去られた音楽の再生に関するドキュメンタリー、 という内容に合っていたと思う。酔い易い僕にとっては、ちょっと辛いところは あったけれど。画面の粗さや色だけでなく、映し出された演奏風景はもちろん、 古ぼけた感じの Havana の旧市街の雰囲気も音楽に合っていたと思う。 音楽については、CDで聴いてきたものと同様。こうやって歌い演奏しているのか、 と、パフォーマンスの様子が見られたのはそれなりに楽しかったけれども。 ミュージシャンに焦点を合わせすぎて、音楽に合わせてダンスする人々、みたいな シーンが無かったのは、ちょっと残念。あのような音楽ではあまり踊らないのかも しれないけれども。 ミュージシャンのバックグラウンドや、_Buena Vista Social Club_ の制作の 経緯についての、インタヴューも適度に織り込まれていた。 個人的には、制作についてのエピソード、例えば、もともと西アフリカの ミュージシャンを呼んで制作する計画だった、とか、Cuba に着いてから ミュージシャン集めしたとか、制作当時は忘れ去られたミュージシャンだった、 とかいったエピソードの方が、興味深かったけれども。それは、映画を観る 以前からレコードを ― _Buena Vista Social Club_ だけでなく、World Circuit レーベルのレコードを ― 好んで聴いてきたから、というせいもあるかもしれない。 ミュージシャンのバックグラウンドについては、忘れ去られたミュージシャンが 再発見されて成功する物語、というほど、物語性が強くなくて、さっぱり目の 仕上がりが良かったと思う。_Buena Vista Social Club_ の成功の前の忘れられた 状態から、ドキュメンタリーを制作していたら、ここまであっさりめに制作 できなかったかもしれない、とは思ったけれども。 2000/01/18 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕