_The Raw and the Cooked - The 4th ICA Biennial of Independent Film and Video 1997_ 神戸アートビレッジセンター, 神戸市兵庫区新開地5-3-14, tel.078-512-5500, http://www2.osk.3web.ne.jp/~kavc/index.html . 2000/1/29 13:00- & 2000/1/30 16:20- イメージフォーラム, 新宿区四谷3-5不動産会館6F, tel.03-3357-8023, http://www.imageforum.co.jp/ . 2000/2/4-6. - Selected by B Ruby Rich. London の現代美術センター (ICA) が隔年で企画している映像作品の巡回展が、 巡回してきている。といっても、すでに3年前のものではあるが。 実際、観ての大まかな感想は、何か新しい発見があったわけではないし、 3プログラム合計約4時間半は長いように思った。 セリフ、ナレーションはほぼ全て英語で、字幕は無し。断片的に聞き取れないので、 観ていてちょっと厳しかった。しかし、そこで実感するのは、話の展開をほとんど ナレーション任せにしてしまっている作品が多いこと。各シーンは美しいの だけれども、そのモンタージュによって何か語ろう、という作りではないのだ。 1920年代のサイレント映画のモンタージュ技法の凄さを改めて思い出したり。 Sarah Turner, _Sheller Shares Her Secret_ (1994, 8min, B+W) など画面は それなりに奇麗だし、テーマ的にも興味深そうに思われただけに、映像作品に するより、スチル写真とテキストの組み合わせで作品を作った方がいいのでは、 と思ってしまった。 フィルム作品もビデオによる上映、ということで、画面の粗さが少々気になった のも残念だった。それもあって、全体としてかなりローファイな印象。何か新しい 映像技法に挑戦している、と感じさせるものは無かった。映像作品で新たな技法に 挑戦するためには、それなりの規模の制作体制が必要、ということもあると思うが。 映像技法も枯れてしまったなぁ、と、少々感じた。 出展作品の映像が語る力の不足を感じた一番の理由は、ほとんどの作品が、 女性問題、移民問題、もしくはセクシャリティにおけるマイノリティといった テーマを扱っていた、ということもあったと思う。3部構成の第三部が "Direct Address" と直接的にテーマを扱ったものだし。第一部の "Drama Degree Zero" にしてもドラマ仕立てで、そういうテーマを扱っていた ように思う。テーマがテーマだけに、ナレーション任せの映像で展開する イメージ優先のアプローチよりも、ドキュメンタリー的な作りにしたほうが 説得力はあったのではないか、とも思ってしまった。ちなみに、第二部は "Electric Transformation" ということで実験映像を扱っているとの ことだったが、ほとんど第一部、第三部と同じような出来だった。 そんなこともあってか、途中に挟まった、コマーシャル・ビデオやミュージック ・ビデオ・クリップの作品を観ると、ほっとする感もあった。特に、Bjork, "Human Behaviour" で知られる Michel Gondry は2本出展していて、いずれも 日本がらみ。Polaroid 社の "Resignation" (1996) は東京 (新宿+小田急線) で ロケされているし。もう一本は、Cibo Matto, "Sugar Water" (1996) の ビデオ・クリップ。ひょっとして、日本人という非西洋人を扱っているという 文脈で、この企画に入れられたのではないか、と邪推もしたくなるが、プログラム の中でも最もスタイリッシュで、ちょっとユーモアのある映像で、良かった。 もっと長めの作品ならば、Manu Kurewa, _One Sunday Morning_ (1996, 20min, B+W)。 Nigeria からの亡命者家族のUKでの生活を捉えた短編映画で、淡々とした日々から、 劇的な最後 (不法移民として警察に捉まりそうになり窓から転落死する。) まで、 ちゃんと映像が物語っている、しっかりとした作品だったと思う。 2000/1/30 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕