Joseph Nadj, _Woyzeck_ 世田谷パブリックシアター シアタートラム 2000/2/11, 14:00-15:00 - Choreography: Joseph Nadj. Music: Aladar Racz. Performers: Josef Nadj, Istvan Bickei, Peter Gemza, Josef Sarvari, Denes Debrei, Franck Micheletti, Henrieta Varga. Yugoslavia / Hungary 出身で、現在は France で活動する Joseph Nadj による ダンスというより、パントマイム劇。それも、少々グロテスクで、ファンタジック というよりシュールな感じ。舞台の大道具のセンスといい、Czech のアニメーション を思わせるような所もある。そして、それが楽しめた舞台だった。シュール/ ファンタジックな東欧のアニメーションが好きな人にこそ薦めたいようにも思った。 舞台全体を使わずに、その上に組まれた小部屋というか小舞台で繰り広げられる ファンタジックなパントマイム劇、というと、去年秋に観た Prague, Czech の Black Light Theater of Jiri Srnec も同じ形式。やはり去年の秋に来日した 「イタリアの狂言」とNHKのニュースで紹介されていた、Piccolo Teatro di Milano, _Arlecchino, Servitore Di Due Padroni_ の舞台も、パントマイムではないものの、 同じような「舞台の上の小舞台」だった (僕はTVでしか観ていないのだが)。 この Nadj の舞台も、そういった、芸能的な舞台を踏まえているところがあるように、 僕は感じた。 もちろん、Black Light Theatre のような、良く言えば分かり易い、悪く言えば 陳腐な物語展開は無い。一人の女性を取り合っている、という状況は示される ものの、パンフレットに書かれた George Buechner の原作の粗筋にも、ほとんど 従っていなかったように思う。そういう所は、さすがにモダンな感じだ。 その芸能的な部分とモダンな部分の微妙なバランスが良かったように思う。 狂気や嫉妬、といったものは、リアルに劇的に演じられるのではなくて、むしろ、 食べられ吐き散らされる豆、とか、潰されるリンゴや、弄ばれる卵、頭から かけられる粉、切り取られ変形される粘土の塊、といったものからシュールに 沸き上がってくるという感じだった。こういったものが、パイ投げ的なスラップ ステックにならないのは、動きが全体的に緩めということもあったと思う。 しかし、緩いながら、時々大道芸的なアクロバットのようになる人物の動きも、 ユーモラスで良かったように思う。 しかし、舞台美術のセンスにしてもシュールな展開にしても、Czech のアニメや Ilya Kabakov のインスタレーションを連想するところが多くて、これって 東欧的なセンスなのなぁ、と思うところしきりだった。もしかして、東欧圏では、 僕が感じるより、ずっとリアルに見えるのかもしれない、と思ったり…。 2000/2/13 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕