宮島 達男『MEGA DEATH: Shout! Shout! Count!』 東京オペラシティアートギャラリー, 西新宿3-20-2 (初台), tel.03-5353-0756 2000/3/3-5/14 (月休), 12:00-20:00 (金・土12:00-21:00) 宮島 達男『Monism/Dualism』 SCAI The Bathhouse, 台東区谷中6-1-23柏湯跡, tel.03-3821-1144 2000/3/2-4/15 (日月祝休), 12:00-19:00 宮島 達男 のカウントダウン作品 (つまり、柿の木プロジェクトではない) の 展覧会が都内二ヶ所で開催されている。様々な周期で「9、8、7、6、5、4、3、 2、1、無点灯」を繰り返す数字を表示するLEDデジタルカウンタを使った作品が、 特に有名だが、それと、そのヴァリエーション、だ。 そのコンセプチャルな意味 (無点灯が「死」を意味する、とか。) よりも、 無点灯があるだけに、ますますきらめく感のあるLEDの輝きが綺麗な作品だし、 それだから良いのだとも思うが。大きな壁一面にマトリックス状にに青いLED デジタルカウンタを配した『MEGA DEATH』は、ある意味で圧倒的だ。ちょっと 力技という気もしたが。青のLEDを使った作品は、『Tranguility - 静謐』展 (千葉市美術館, 1996) で初めて観たけれども、そちらのさり気ない間を持た せた作品の方が、染み入るような良さがあった気がする。当時は青いLEDが 実用化されたばかりだったので、そのものめずらしさもあったかもしれないが。 SCAI The Bathhouse で展示されている『Monism/Dualism』は、赤と緑のLED デジタルカウンタを交互もしくは2つおきに並べたもの。かなり前から赤と緑を 組合せた作品は観てきたが、これだけ細かい単位で混ぜたのは初めて観た。 遠目で観て混色した、というほどになっていなかったし、むしろ、赤と緑の 輝度の違い (赤の方が輝いて見える) のが少々気になったが。青のLEDが実用化 されて以来、赤緑青のLEDを組合せて遠目にはカラーに見えるようにした LEDの電光掲示板なども作られるようになっている。『MEGA DEATH』のような マッシブな作品を作るなら、いっそ赤緑青のLEDを組合せて、無点滅や文字の 違いが遠目には色斑に見えるような作品にするというのも、とても面白いように 思ったけれども。実際に作ると、ちょっと下品になるかもしれない…。 『Floating Time V1-100』は、去年末にフジテレビ・ギャラリーで展示されて いたもの。そのときに観た印象と変わらないのだが、コンピュータ・ グラフィックス化したことにより、カウンタの3次元空間内での浮遊感を実現した のかもしれないけれども、LEDの光の持つ独特の質感 ― それが良かったのに ― が失われて、 やたらにコンセプチャルでつまらなくなってしまった気がする。 文字の表示がもっと細かくなるとまた違くなるのかもしれないが、現状の ギザギザに見える粗い文字は、興醒めだ。 『Counter Voice in Milk』は、LEDデジタルカウンタの代わりに、人のカウント ダウンを捉えたビデオを流す作品。初めてギャラリー小柳でこの手の作品 を観たとき (1996年) は一発ギャグっぽいところが面白かったのだが。この作品も このシリーズとして初めてみていれば、その馬鹿馬鹿しい感じが、いささか シリアスになりがちなLEDを使った作品の対比として楽しめるのだろうが。 その後、何回も観ていると、初めて観たときから感じているビデオである ことの限界が感じられ、コンセプチャルな感じばかりが目についてきて、 ちょっと辛い。つまり、もっと生のパフォーマンス性があった方が面白いの ではないか、と思うことなのだが。ビデオで流すだけでなく、客もその間を 自分でもカウントダウンしながら歩かなくてはいけないということにする、とか。 ビデオにしたりコンピュータ・グラフィックスにするとコンセプトが滲み出 過ぎてしまうのが気がかりなのだが。そういう意味では、『Count Down Drawing against the Wall』もコンセプト先行という感じで、ハズしている ような気がする。 ま、コンセプト自体は初めのうちはたいして気にならないだろうし、 都内の美術館では初めての個展なので、あまり観たことの無い人にとっては お勧めの展覧会かもしれない。 2000/4/1 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕