『ストレイト・ストーリー』 _The Straight Story_ - France / USA, 1999, color, 111min. - Directed by David Lynch. Written by John Roach and Mary Sweeney. - Richard Farnsworth (Alvin Straight), Sissy Spacek (Rose Straight), etc 画面の端が気にならない大画面で観るのがお勧め。Iowa 〜 Wisconsin の広大な コーン畑を捉えた映像を堪能するには。画面の綺麗さでは、教会のある最も古い 時代のフランス人墓地での野営のシーンも、不思議な綺麗さが印象に残っているが。 フライヤなどに用いられた夜空は、ちょっと作り物っぽすぎるが。 最初の家出少女との野営のエピソードで、ちょっと保守的な家庭観が出て来て、 この調子で続いたらイヤだなぁ、と思ったのだが、後はあまりそんなことが無くて 良かった。エピソード、といえば、自転車のツーリング集団と遭うエピソードが あったが、もし、主人公の Alvin Straight が若かったら自転車だったのだろうか。 というか、あのような旅は、自転車旅と同じような視点とスピード感を感じる。 自動車の密室感とスピード感ではありえない展開だ。トラクター速度のロード ムービーという感じだ。トラクター (Straight が乗るのは、John Deere 110 Lawn and Garden Tractor という1960年代に製造された名機。) も、自動車ほど ブラックボックス的ではなく使用者がある程度いじれるもの、使用者によって 状態が変わってくる道具、のように描かれていたし。そこから生じる、自力で行く という感覚も、自転車に近かったと思う。 ロードムービーというと Wim Wenders や Jim Jarmusch の映画を思い出すわけだが。 もし Jarmusch がこういう感じの映画を撮ったら、やはりあのようなスピード感と 間合いになるような気がするが、しかし、もっと茶化すような、というか、 「(騎士道精神ではなく) 開拓者精神の Don Quixote」のような面が強い展開に なってしまったと思う。どちらが良いというものではないが。といっても、 『ストレート・ストーリー』はいささか感傷的とも思ったし、もっと笑いが欲しい とも思ったのだが。 登場人物の観点では、やはり、いい味を出した老人がポイント。主人公はもちろん、 Straight を送り出す町の仲間とか、途中で会った戦争経験を語り合う相手とか、 Mt. Zion のバーテンダーとか。そして、それを捉える、少し間合いのある映像が 良かったように思う。 David Lynch の映画はほとんど観ていないので Lynch の映画としてどうか、という 点は評価できないが、なかなか楽しめた映画だった。 2000/4/7 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕