実験映像作品に関するフェスティバルである、イメージフォーラムフェスティバル 2000で観た作品から。 Chantal Akerman, _Sud_ - France, video, 1999, 70min. 以前から気にはなっていた、France の女性映像作家の新作。彼女の作品は初見。 アメリカ南部の田舎町で起きた人種差別主義者による黒人リンチ殺人事件を追った ドキュメンタリー的な作品。事件を冷静に受け止めているような人々に対する淡々 としたインタヴュー、静かに捉えられた緑豊かな美しい南部の田舎の光景、ゴスペル で盛り上がる犠牲者の葬儀の様子…。と、ワイドショーのようなショーアップは もちろん、NHKの特集番組で見られるような問題を際立たせる演出すら無い。 まるで、事件に煽られずに、冷静に対処しよう、と、呼びかけるかのように。 しかし、淡々としているだけに、最後の、車載カメラから車の後ろの眺めを延々と 捉えた美しいショットが、リンチで車に引きずられたというエピソードと重なって、 ぐっとくる強さがあるようにも思うが。 Oliver Herrmann, _Eine Nacht, Ein Leben_ - Germany, video, 1999, 38min. Pierre Boulez 指揮 Ensemble InterContemporain 演奏による Arnold Schoenberg の歌曲 _Pierrot Lunaire_ のビデオ・クリップ、とでもいった作品。20世紀末の 都会に舞台を移しており、少々グロテスクでシュールな感じの演出、というのも、 MTV的なセンスを感じた。MTV的という意味では、映像それ自体は凄いとは思わな かったけれども、Schoenberg ともなるとこういう現代的な解釈でも違和感が無い のかな、と思ったのが収穫か。 Hal Hartley, _Kimono_ - Germany, 35mm, 2000, 26min. Hartley というと、都会 (NY) に住む駄目男を主人公にした映画を撮りつづけている、 という印象が強かっただけに、意外な作品。野山の自然の中をウェディング・ ドレス姿の 二階堂 美穂 がさ迷い歩く間に体験する幻想的な一瞬、とでもいうもの。 ウェディング・ドレスと着物の対比は単純だとは思うし、夢オチ的な面もいまいち だけれども、話に輪環構造を持たせるような形式性は、野山を舞台でも相変わらず だなぁ、と思った。 この作品は「エロチック物語シリーズ」としてテレビ放送されたそうだし、実際 そういう面も少しはあると思うが、愛妻 二階堂 をフィーチャーするというのも、 私的だなぁ、と思ったり。 Matt Hulse, _Wee Three_ - UK, 16mm, 1998, 5min. NHK教育TVでスポット的に使われそうな、子供を主人公とした、実写+アニメーション の小品。これといって強い印象はない。 Isaac Julien, _Three_ - USA, 16min, 1999, 17min. ダンスのイメージ・ビデオなのだが、妙に物語的な演出があったり、セピア色に したり、ソフトフォーカスにしたり、ストップモーションにしたり、といった 処理があったせいか、逆にダンスの動きが死んでいて、平凡なイメージ・ビデオに なってしまったように感じた。 2000/5/1 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕