『グラフィック・デザインのモダニズム ― 20世紀・機械時代のグラフィック革命』 _Graphic Design in the Mechanical Age - Selections from the Merrill C. Berman Collection_ 川崎市民ミュージアム, 川崎市中原区等々力1-2, tel.044-754-4500 2000/4/22-6/11 (月休), 9:30-17:00 1910-30年代の欧米のグラフィック・デザイン (広告ポスターや本、雑誌のデザイン)、 特に当時の欧米で隆盛した Avant-Garde 運動と連動したデザインに焦点を当てた 展覧会。第一部の芸術運動との関係では、Futurism、Dada、Constructivism、 De Stijl、Bauhaus、New Typography といったところが取り上げられており、 当時の Avant-Garde 運動におけるデザインが好きであれば、充分に楽しめる 展覧会だろう。といっても、それほど目新しい視点を持って構成されているわけ ではないので、新たな発見がある、ということも無いだろう。 Fortunato Depero のボルト留めの本や、 El Lissitzky / Vladimir Mayakovsky, _Dlya Dolosa (For The Voice)_ (1923)、Jan Tschichold, _Die Neue Typographie (The New Typography)_, (1928) らの原本といったレア本の展示は、確かに惹かれる ものはあるし。実際の展示を観ていても、The Ring の Piet Zwart や Jan Tschichold のデザインは商業的にも洗練されていると思うし、Russian Avant-Garde の Alexandre Rodchenko や El Lissitzky のデザインはカッコイイし。けど、それは 今まで観たことな無いわけじゃない、ということで。 そんな中で新鮮に観られたのは、USのデザイン。Avant-Garde 運動は欧州を中心と していたので、あまり英米の似たようなデザインを観る機会も無いからだ。 特に良かったのが、Lester Beall の Rural Electrification Administration のためのポスター (1937)。家庭電化を促すためのポスターなのだろうけれど、 スローガンの類を使わずシンプルで構成的な画面で説得力を持たせていて、 とてもかっこ良い。作者不明だったのだが、USの1932年の選挙で共産党に投票を 促すポスターなど、Russian Avant-Garde の影響も見えて、ここまで影響が 届いていたという感慨もあって、良かったけれど。 発見ではないが、Berlin Dada の John Heartfield の諷刺の効いたコラージュも、 笑えて面白かった。Hitler ネタとか直接的なものもあったり。『デザインと社会変化』 『デザインと政治』といったパートもあって、社会的言及のある作品も多かったが、 比較的左翼的な立場のものばかりだったように思う。僕はそういうのが好きだけれど、 Italia の Futurists も扱っていたのだから、そうではないものも少し焦点を 当てると、それはそれで興味深そうに思ったのだが。 2000/5/21 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕