折元 立身『Art Mama + Bread Man』 原美術館, 品川区北品川4-7-25 (品川), tel.03-3445-0651, http://www.haramuseum.or.jp/ 2000/6/10-8/27 (月休), 11:00-17:00 (水11:00-20:00) Fluxus の活動への参加の経験もある、主に海外で活動しているアーティスト 折元 立身 (Tatsumi Orimoto) の日本では初の本格的な展覧会。パフォーマンス というか、ある種のコミュニケーションに基づくプロジェクトを、主な表現手段 として取っている作家で、そのドキュメントの展示を観ても、さほど面白く無い だろうなぁ、と予想されたので、オープニング・パーティに合わせて行われた パフォーマンスを観てきた。 実際のところ、写真を中心にしたパフォーマンスのドキュメンテーションは、 その表現としての工夫や試みがあるというほどでも無いので、パフォーマンスを 観ていないと、たいして楽しめるものではないように感じた。実際のパフォーマンス を観ていれば、ヨーロッパ各地でのドキュメンタリの写真を観て、その展開の 違いを想像するのも、それなりに意味があるかもしれないが。そういう点では、 会期中に何回か開催される予定のパフォーマンスに合わせて、観に行くのが良い ように思う。 正直に言って、作家自身の母親を引き出して行った "Art Mama (Big Shoes)" の パフォーマンスは、いささか私的に過ぎて感傷的だと思ったけれども。 "Bread Man" のパフォーマンスは、顔面にフランスパンの類を結び付けていく という馬鹿馬鹿しさは、それなりにユーモラスで楽しめた。単に自己完結して いるのではなく、観客との駆け引きとでもいうところもあるのだが、こういう ものは、ギャラリー内のお約束な空間じゃなくて、大道芸のように街中でやった 方が、もっと意外な反応があって、観る方も楽しめたのではないかなぁ、 と思った。もちろん、うまくいけばの話だし、大道芸ほど街中でうまくいく 客引きの強度があるか、微妙だと思ったけれども。街中でのパフォーマンスを 捉えたドキュメンタリの写真を観ていても、場所選びは微妙だと思ったけれど。 "Bread Man" という名前からも、1998年末に観た 磯崎 道佳 『いつかどこかで、 あるいは つづく つづく つづく』展での、「FUKU-MAN」なパフォーマンスを 連想したりするのだが。作家自身の母親を使った "Art Mama" を観た後だった せいか、磯崎 道佳 の方が、物語性を排しているように感じた。古着を使いながら、 その服の持つ「因縁」を切り離そうという造形から、そう感じるのだが。そして、 それは、どちらが良いかという問題よりも、世代の違いなのだろうか、という点で 気になったのだけれど。 今回、"Bread Man" のパフォーマンスで使った新聞紙とサイン入りのパンを貰う ことができた。ちゃんと保存するというのも一つ意味があるのかもしれないが (アートのコレクションという点でも)、自分自身もそれを食べるパフォーマンスを やって、その記録でも取っておいたほうが、むしろ、面白いような気がする。 2000/6/11 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕