『映画史』 _Histoire(s) Du Cinema_ - 1988-1998, color, video, 51min/42min/27min/29min/27min/27min/28min/37min. - Directed by Jean-Luc Godard. もともと8回分のビデオ連作として制作された『映画史』が、前編・後編の2回に 分けて劇場上映されたので、見てきた。纏めると、半分でも2時間以上あり、 正直に言うと、僕にとってはいささか集中力を維持するのが困難な時間だった。 むしろ、DVDのような媒体を使って、家のテレビで、1編ずつ切りながら観た方が、 ずっと楽しめる作品だと思う。 様々な映画から取られた断片的な映像のモンタージュ、字幕による様々な警句、 押し殺すような自分自身によるナレーション ― それも答えの無い自問のような ものが、相補したり、矛盾したり、並行したりして進んでいく手法は、いつもの Godard の作風の延長。それはそれで良いとは思うけれど、特に矛盾の部分で、 いささかユーモアに欠けたのが残念。僕が最も面白く思えたのが、Tex Avery の カートゥン・アニメーション 『狼男と美女』シリーズの狼男と美女を、 映画に出てくる美男美女へのツッコミに使っていたところ、という程度なのだ。 もちろん、John Coltrane の sax が聞こえて喜んだり、Eisenstein をはじめ Russian Avant-Garde の映画の断片を見付けて喜んだりもしていたのだが。 しかし、美術史への言及が中心的な美術作品が概して面白くないように、 映画史への言及が中心的な映画は、そのアートのイデオロギーが強いほど、 正統性の確立の回路が短絡して面白く無いことが多い、と、最近、僕は思って いるのだが、この映画もそういう所があるように僕は思うのだ。もっとギャグを 噛ます余裕があれば、そういう部分も薄まっただろうに。 そもそも、映画史を取り上げて映画の見方を脱構築するのであれば、Nouvelle Vague から40年も経ったもはや、このようなビデオ・エッセイ的なやり方は 無効になってしまっているようにも思う。むしろ、実証的に地道に調べる方が 今は有効なのでは、と、この映画を観ていて考えさせられてしまった。 2000/6/18 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕