『三宅 一生 展』 Issey Miyake, _Making Things_ http://www.isseymiyakemakingthings.com/ 東京都現代美術館, 東京都江東区三好4-1-1, tel.03-5245-4111. http://www.tef.or.jp/mot/ 2000/4/29-8/20 (月休), 10:00-17:30 (金10:00-20:30) Fondation Cartier, Paris (1998)、Ace Gallery, NY (1999) と巡回してきた 服飾デザイナー 三宅 一生 の展覧会。回顧展というほど網羅的ではなく、 _Pleats Please_ とそれ関連のプロジェクト、_A-POC_、_Starburst_ に焦点を 絞った展覧会だった。いずれも、平面裁断、折り畳みといった、平面であることに 拘った造形であり、おかげで統一感があったが。といっても、例えば、洋服の 立体裁断との対比で、コンセプトの「平面」の持つ意味を際立たせるような 展示でも無かった。_Pleats Please_ にしても、_A-POC_ についても、以前から 知っており、僕にとっては造形的な新鮮さがなかったのも事実だが。 しかし、平面的なものが静的に壁に展示されてしまうと、それが服であることの 面白味が激減してしまうのも確かだと思う。例えば、_Pleats Please Issey Miyake Guest Artist Series_ の 森村 泰昌 や 荒木 経惟 とのコラボレーションなど、 非方形のプリーツ状の素材にプリントしてあれば、同じようなインスタレーションの 効果が得られるんじゃないか、というもので、展示としての説得力に欠けるも のがあった。服として着れば面白くなる、というものでもないようにも思うけれど。 そういう点で面白かったのは、_Jumping_ の展示。_Pleats Please_ 系の服が たくさん天井から吊るされており、それが間欠的に上下に揺すられるというもの。 揺すられる度に服に動きが生じて、その変化が楽しい。_Pleats Please_ 系の 素材は伸縮性が良いので、なおさらだ。服が跳ね踊っているようにも見え、 Philippe Decoufle のダンス (New Order, "True Faith" (1987) のプロモーション ビデオとか) をふと思い出したり。Decoufle のダンスの衣装に使ったら面白いの ではないかと、観ていて思ったのだが。実際、発表した Paris のコレクションでの ファッションショー (会場でビデオで観ることができる) でも、ダンス的な動きを 取り入れていたのだったが。 しかし、展示されていた服を観ていても、ダンスや演劇の舞台衣装として使うと 面白そう、とは思うものの、自分が着たい、という状況が想定し辛いのも確かだった。 それは、その造形が自律的、というか、服装の持っている社会的なコードから 造形を切り離す方向性を強く持っているからだとも思う。例えば、舞台衣装として ダンス向けだとは思うけれども、クラブに踊りに行くのに向いているとは、 服を観ていても思えないのだ。それが、展示を観ていて少々弱く感じる所かも しれない。 チューブ状のジャガーニット生地から、様々な服を切り出していく _A-POC_ は、 『身体の夢 ― ファッション OR 見えないコルセット』(東京都現代美術館, 1999) での展示の方が、草間 弥生 とのコラボレーションも含めて良かったと思う。 「三宅 一生 の全貌」とか「服飾とは何か」というような気負いは感じられず、 展示の規模の割に、楽に観られる展覧会だと思う。 2000/7/9 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕