伊香保温泉の近くにある、観光牧場 伊香保グリーン牧場 内にある 原美術館の 別館、ハラ・ミュージアム・アーク。例年、夏は、『アートは楽しい』という、 国内の若手作家を取り上げ、ちょっと遊び心のある作品を展示する企画をして いたのだが、今年は無し。その代わり、3つあるギャラリーある1つを使っての 企画が、これ。 間島 領一 『マジマート in 渋川』 ハラ・ミュージアム・アーク, 群馬県渋川市金井2844, tel.0279-24-6585 2000/7/7-9/27 (7/13休,9月木休), 9:30-16:30 1997年に、ミズマ・アート・ギャラリー に出現したときにも観たことがある 『マジマート』。コンビニエンス・ストアを擬したインスタレーションを 施して、『修繕アート』や、食をテーマにしたマルチプル作品を「売る」という ものだが。それが、観光地にも登場、といったところか。 しかし、場所を変えて観て実感したのは、美術の制度に対する依存度が高い 作品なのだということ。コンビニエンス・ストア、もしくはファースト・フード・ チェーンのノリをギャラリーに持ち込んだのがこの作品の最も「面白い」ところ なのだろう、と思うのだけど。持ち込んでも、作品の焦点が美術のシステムの 方にあるのであって、コンビニエンス・ストアなり、ファースト・フードなり を支えるシステムではない、少なくとも2つのシステムを違いに脱構築してやろう というところまでいってない、というのが、僕にとっては物足りないところだ。 ハラ・ミュージアム・アークは、隣の観光牧場に遊びに来たついでに立ち寄る、 美術目当てではない客も多いわけだけれども、牧場内を歩いていたら、 「あれでも美術なの?」と言って歩いているカップルとすれ違ってしまった。 美術のシステムを問うという目的なら成功なのかもしれないけれど、そんなもの を問うたところで、と思ってしまうことろもあるのだった。 ミュージアム・カフェ Cafe d'Art では、展覧会ごとに、展示のイメージを ケーキにしたものが、メニューになるのだが。今回は、「食べるアート」と いうことで、ケーキだけでなく、フード・メニューにも、『マジマート』の イメージを反映したものが出た。といっても、人型の卵焼きが載った ハンバーガーなのだが。(ちなみに、グリーン牧場の支店では、「ヤキソバ ガール」だった。) 型は作家自身が作ったと聴くが、仕上がりは、『マジマート』 で展示されているような、コンビニエンス・ストアやファースト・フードの ようなチープでジャンクな感ではなく、Cafe d'Art ならではの上品な感。 もうちょっと毒々しい方が面白かったかも。 観光地美術館にコンビニエンス・ストアを持ち込んでも、と思う所もあるだけに、 いっそのところ、観光地のお土産屋みたいなノリで新たにやればとかったのに、 とか思ったり。隣の牧場の中にも「マジマート支店」という屋台を出していたの だけれど、そういう点では、そちらの方が遊園地などの売店や屋台と同じ ジャンクフードのノリで、『マジマート』らしかったように思う。といっても、 キャンペーン・カーも、アークの庭に止めたままで、グリーン牧場を走り回って いたりしなかったわけで、ノリがいまいちだったように思う。 間島 領一 『マジマート in 松代』 in 『越後妻有アート・トリエンナーレ2000』 まつだい駅前, 新潟県松代町, tel.02559-7-3000 (松代観光案内所). 2000/7/20-9/10 そういうハラ・ミュージアム・アークで感じた物足りなさを、一気に解消して くれたのが、この『越後妻有アート・トリエンナーレ2000』出展作品である、 『マジマート in 松代』。バスツアーで続けて観られて良かったと思う。 基本的に、グリーン牧場の「マジマート支店」と同じコンセプトなのだが、 アクティヴに動いているだけに楽しい。学園祭の屋台の、アート祭版という 感も否めないが、ノリで楽しませてもらってえるところがある。逆にいえば、 この松代の方にパワーを奪われてしまったことが、渋川ではいまいちになって しまった原因かもしれない。これは、ちょっと惜しかったかもしれない。 キャンペーン・カーは、『越後妻有アート・トリエンナーレ2000』の松代町 展示作品の巡回乗合タクシーも兼ねているのだけれど、案内をしてくれる その運転手 (地元のタクシー会社の社長さんらしい。) が、またノリのいい キャラクターをしていて、楽しいのだ。作品のコンセプトからはズレるようにも 思うのだけれど、楽しければOKと思ってしまうほどの良さだ。これに乗ることが できたおかげで、お祭りのノリで楽しめたようにも思う。 もちろん、徒歩では巡回不可能だし、自家用車で巡回するのも大変と思われる 作品群を、効率的に案内してくれるので、『越後妻有アート・トリエンナーレ2000』 の松代町の展示を観て回るときは、これを利用することが、大変にお勧めだ。 2000/7/23 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕