蕨駅東口にあった美術館、斎藤記念川口現代美術館は、普通のビルの中に作られた 中二階があるちょっと変わったフロア構成の美術館で、その落ち着いた静かな感じの 企画が多いという印象も良かった美術館だったのだが。去年には、資金繰りが 付かなくなって1999年3月に無期限の休館になっていた。その代わりに、美術館の 近くのビルの一室を借りて、川口現代美術館スタジオとして活動している、という 話を聞いていたので、足を伸ばしてみた。実際のところは、一階の店舗跡のような スペースに仮設したギャラリーという感じであった。 井上 尚子 『Marble Lovers - On Home Ground (Marble Project vol.2)』 川口現代美術館スタジオ, 川口市芝新町7-20ローザ第二ビル1F (蕨), tel.048-261-7878, http://www.kawaguchi.site.ne.jp/ . 2000/7/13-8/6 (月火水休), 12:00-17:30 (金土12:00-20:00). 会場に入ると、かなり強烈なチョコレート臭。しかし、靴を脱いで暗室に入っても、 マーブル・チョコレートがあるわけではなく、マーブル・チョコレートを金槌で 打ち砕きこの破片を手で練り上げていく様子を捉えたビデオの投影があるだけ。 それはそれで、ちょっと偏執的な印象を受けるものではあるのだけど。 で、ギャラリーの人の案内で、半透明の投影スクリーンをくぐると、その向こうに 強烈なチョコレート臭の源、床に何万粒ものマーブル・チョコレートが敷き詰め られたスペースがあった。プラスチックの靴を履いてその上を歩くことができる のだが、既にかなり踏み砕かれて、砂のようなチョコレートの粉になっている。 どろどろになっていなかったのは、冷房のおかげだろうか。ま、この香りと質感で それなりの印象を残す作品になっているとは思う。 「近代日本の家族制度」や「母」というコンセプトについては、それほど説得力が ある展示ではないと思うけれど。以前に観た、ギャラリーいっぱいにレモンを 敷き詰めた 廣瀬 智央 『Lemon Project 03』 (ザ・ギンザ・アート・スペース, 1997/12) に似たインパクトはあった。というか、香りを扱って、床にいろいろ 敷き詰める 廣瀬 のプロジェクトと似ている印象を受けた。それとは異なるような もう一捻り (ビデオ・インスタレーションがいまいち生きてなかったように思う。) があると、もっと面白くなるように思うのだけれど…。ちょっと惜しい展示だった。 この展示は、2000/2 に女子美術大学講義室での vol.1 に続くインスタレーションで、 これに続いて、2000/11 にギャラリー・ル・デコ で vol.3 の展示を行うそうである。 2000/8/6 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕