Ennio Marchetto, _Ennio 2000 Dinner Show_ 赤坂プリンスホテル 2000/8/12, 19:00- Venice, Italy 出身の "The Living Cartoon" な芸人、Ennio Marchetto の ディナーショーを観てきた。もちろん、観たのは初めて。 紙で作られた書割り的な「衣装」で、有名な歌手や俳優、絵画や映画のシーン、 などをコミカルに演じる、という出し物。音楽に合わせて動き踊り、セリフは 無いので、パントマイム的。それ自体は、宴会芸的なのだが、繰り出してくる 演目も1件1分程度でテンポ早い切り替えがとても良かったし、大柄な体の動きも良く、 とても楽しいエンターテインメントだった。紙の衣装も、豪華とかリアルとか では全くを無いけれども、いささか安っぽいながらも、笑いのポイントを押えた 作り込みが成されていたと思う。 最初の Marilyn Monroe、続いて、L. da Vinci の "Mona Lisa" と来たときは、 正直に言って、ちょっと本格的な宴会芸程度かな、といやな予感がしたのは事実 なのだが。そこまでは演目ことに舞台裏に下がっていたし。これに続いたのは、 映画 _Singing In The Rain_ の Gene Kelly。しかし、そこから、舞台の上で 踊りながら紙の衣装を折り替え組み替え、なんと、Stevie Wonder に変身。 この脈略の無さがかなりシュールで、大受けしてしまった。それ以降の演目も そうなのだが、脈略がありそうで無さそうで、いささか展開が読めない"変身"が 彼の芸の一番のポイントになっていたように思う。 "God Save The Queen" を B.G.M. に登場した Queen Elizabeth が、音楽が Queen の "Somebody To Love" に切り替わって Freddie Mercury に化けたり (これは Queen 繋がり)、ミサ曲風な音楽をバックに登場したローマ法皇が "Caimanera" (Cuba の準 anthem) をバックに踊る Castro に化けたり。 しかし、こういうヤバいネタは、逆に判り易い。Matryoshka (Russian doll) が、 Charlie Chaplin へ、さらに Carmen Miranda に化ける展開など、脈略の 無さというか、展開の読めなさが、演目の中で最も面白かった。日本ネタでは、 「川の流れのように」を歌う 美空 ひばり が「LOVEマシーン」を歌う モーニング娘 に化けるというものが、最も面白かった。 といっても、観ていて元ネタが判ったのは2/3程度だろうか。周囲の客の反応を 観ていると、海外ものを中心にネタがほとんど判ってなかったようにも思う。 音楽、映画などの知識をある程度必要とする、という点では、一般受けを狙う エンターテイメントとしては、いささか厳しいかもしれない。かといって、 MCなどで演目の説明をしたら興醒めだとも思うし。ま、元ネタが判らなくても ある程度楽しめる作りにはなっていたけれど。 Marchetto は以前にも何回か来日しているのだけれども、今回の日本公演は ディナーショーのみ。ちょっとヒくところもあったのだけれど、料理は バイキング方式の食べ放題だし、料金もディナーショーにしては安かったので 勢いで行ってきた。しかし、ディナーショーより、例えば、静岡大道芸 ワールドカップのステージあたりが似合いそうな芸だとも思った。雪竹 太郎 の 『人間美術館』 (ちなみに、英題は "The Living Museum") より下世話で コミカルだけれども、宴会芸的な面で共通するところが感じられたし。 しかし、完全に路上だとやり辛いだろうか。最近、NHK教育TVの番組 『ハッチポッチステーション』のおかげで、チケットを取るのも困難に なっているという噂も聞く、グッチ裕三のディナーショーもあるし、こういう ものもアリなのかもしれない。 といっても、Marchetto は、1990年の Edinburgh Fringe Festival で注目されて 出てきた芸人で、大道芸的な活動はしていないようなのだが。ちなみに、音楽に 近いところでの活動では、1993年と1995年に WOMAD に出演している他、 1998年には、UK の electronic pop バンド Erasure (ex-Depeche Mode / Yazoo の Vince Clarke のバンド) と一緒に Germany と US をツアーしている。 この Erasure とのツアーがどんなものだったのかが、僕はとても気になって いるのだけれども…。 2000/8/12 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕