Philippe Decoufle & Compagnie D.C.A., _Triton (2ter)_ 世田谷パブリックシアター 2000/10/24, 19:00- - Didier Andre, Drad Denys, Dominique Grimonprez, Daphne Mauger, Irma Omerzo, Audrey Yvars, Celine Zordia, Cyrille Musy, Christophe Waksmann. - Philippe Decoufle (artistic direction), Joseph Racaille, Spot, Coulombeau, Caro, Sir-Cus (original music), Pierre-Jean Verbraeken et Yves Bernard (decors), Jean-Malo (costume), etc France のダンス (?) カンパニー Philippe Decoufle & Compagnie D.C.A. の、 去年の _Shazam!_ に続く _Triton (2ter)_ の日本公演の初日を観てきた。 New Order, "True Faith" (1987) のビデオ・クリップをはじめ、映像では 観たことがあったが、生で観るのは初めて。 想像していたよりも、サーカス的。というか、演出はサーカスの枠組みを そのまま使っていた。サーカスのテント内を仮設したような舞台だったし、 野外テントを擬すかのように虫の小さな鳴き声が客席側から流されていた。 楽屋は隠されておらず、自分の番ではないダンサー/芸人が舞台脇で休んで いる様子まで見ることができる。クラウン (道化) が進行を司り、その合間に、 アクロバット芸が時にユーモラスに時にロマンチックに折り込まれる。 そもそも開演前から、クラウン役のダンサーが客席でキャラメルを配って 歩いているのだ。芸のキメ所では拍手を促したりするし。最初のうちは客も 黙ってみていたが、次第に促されなくても拍手や笑い声などが上がるように なったけれど。芸の面白さの割には客の反応の方が悪かったように思うが…。 テント状の櫓の頂点の滑車を通したワイヤで繋がれた男女2人による半空中での アクロバット芸が、ちょっとユーモラスな点を含めて最も気に入ったシーンだった。 ダンス的なシーンでは、舞台の中央にスクリーンを張って、シルエットのダンスと 実際のダンスをシンクロさせるところが、シルエットのダイナミックさを含めて 強く印象に残っている。御馴染みの伸縮するロープを使っての空中アクロバット芸も 良かったし、ジャグリングを含めてクラウン芸も楽しんだけれども。小技な アクロバット芸とかも良かったし。約1時間半、飽きずにとても楽しめた舞台だった。 しかし、モダンなダンスにプレモダンなサーカスの要素を盛り込んだのではなく、 サーカスにおけるモダンの一つのありかたを観たように思った。例えば、 映画 _Middle Of The Moment_ (Nicolas Humbert and Werner Penzel (dir.)) で観られる Cirque O はサーカスにおける芸の身体性を突き詰めている点で モダンだと思うし、その表現のミニマルさという意味でも、モダンなダンスと の共通点も大きいように思う。Decoufle のモダンさというのは、芸の身体性 ではなく、身体的なものと映像的なものとの関係性を追及しているように 僕には思える。それは、実際のダンサーと別のシルエットをシンクロさせた ダンスが僕に強く印象を残しているからかもしれないが。そういう点でも ダンスの文脈で語られることが多い割には、かなりズレた位置にいる、という ことを実感した公演だった。 この公演は、『世田谷アートタウン2000』の中での企画で、『三茶de大道芸』の 関連企画とも言える。これはピッタリの組み合わせだと思う。Decoufle の ダンスの客層と、大道芸の客層は、住み分けてしまっているように思うけれど、 これを機会に少しでも交じり合うことがあったら、面白くなると思うのだけど。 2000/10/24 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕