世田谷アートタウン2000 ― 三茶 de 大道芸 三軒茶屋界隈 (世田谷区) 2000/10/28,29 今年で4年目 (1997年に始まった) という、比較的新しい大道芸フェスティヴァル。 1日目も後半から2日目まで小雨というあいにくの天気で、2日目は規模を縮小しての 開催だった。今まで足を運んだとこがなかったのだが、家の近所になったので、 2日とも足を伸ばして、最初から最後まで観てきた。というわけで、観た芸人を 全ては挙げないけれども、気になった芸人についてコメント。 今回、最も印象に残ったのは、バチカン・ブラザーズ。小西 康久 (ex-オンシアター 自由劇場) 率いるコミック・バンド。楽器の持ち替えはあるが、基本的に tenor sax, trumpet, violin, accordion, tuba, djambe という編成で、生演奏をバックに、 マジックやジャグリングをする。楽器演奏にしても、ジャグリングにしても、 技術的なレベルはそれほど高いものではないけれども、妙に強気だけど人の良い 感じの 小西 のトークや展開の仕方が面白いので、とても楽しめた。特に28日の 14:30からのステージは、その直前に行われた Abovo のブランコの設営が手間 取っている間から、場繋ぎで小ネタの芸をいろいろやってくれたし、ステージの 途中で 吉田 日出子 (ex-オンシアター自由劇場) がゲストで登場して一曲歌を 披露するなど、かなりお得で楽しめたものだった。 Abovo も、富田 綾子 (ex-オンシアター自由劇場) が France のサーカス学校に 留学した際に結成した、Pierre Yves との、空中芸+ジャグリングのデュオ。 富田 綾子 の空中芸も、Pierre Yves のジャグリングもそれほど凄い技を見せる わけではないし、ほとんど客弄りはしないけれど、芝居仕立てで演技にかなり クラウン的要素が入っているので、楽しむことが出来た。 もう一組、空中芸+ジャグリング/クラウンのデュオとして、France の現代 サーカス Cirque Baroque の団長 Christian Taguet が、空中芸の Caroline と 組んだデュオがあったのだが。こちらは組んでやる必然性を感じない演出で、 いささか残念。Christian Taguet は客四人に引かせたロープの上の綱渡りと 火吹きジャグリングをキメ技に持つ芸人で今までソロで観たことがあるのだが、 空中芸と組み合わせたことによって、逆にいささか間延びしてしまった。 Caroline の演技は、確かに Abovo よりも技術的に高度だけれども、クラウン的な 要素が無く身体性に重点があるだけに、大道芸ワールドカップ in 静岡 1999 で 観た Fura の演技に比べての切れ味の悪さが目に付いてしまった。28日の最初に 観ただけなので、後の演技では、こういった点は改善されたかもしれないが。 Abovo や Cirque Baroque は、関連企画として開催中だった世田谷パブリック・ シアターでのサーカス的な要素の濃い公演 Philippe Decoufle & Compagnie D.C.A., _Triton (2ter)_ のとの比較も気になったのだけれど。こう続けて観ると、 特に Decoufle の映像的な要素は、大道芸とかなり違うのだなぁ、と痛感した。 Avignon Public Offに出演したこともあるという France の女性ジャグラー Berenise Levy も28日の最初は客の反応も悪く演技はぼろぼろ。クラウン芸的な 要素もなく、客弄りもトークも無いダンス的なパフォーマンスなだけに、 客の盛り上がりに欠けがちなのは事実なのだが。29日の最後の演技では、 英語でだが演目の簡単な説明もするようになったこともあり客の反応も良くなり、 失敗無しで決まる演目もあって、見違えるようにノッた可愛い演技を見せて くれたが。しかし、こういうダンス的な演技では技の決まり具合が厳しく見えて しまうので、基本的な技術がまだまだだと、まだちょっと辛い、と思った。 女性ジャグラーは珍しいので期待したのだが、ちょっと残念。 一方、いつも難易度の高い技で楽しませてくれるのが、中国雑技団。今年も、 ステージ毎に出し物をいろいろ変えて楽しませてくれたのだが。今回、一番強力 だったのは、椅子を組み上げてのアクロバット芸。6脚の椅子を高さ10m以上に 組み上げ、その上で倒立などするもの。スリルという迫力といい圧倒的だった。 安定した高度な技術というと、ex-上海雑技団 の日本人芸人、アパッチも、 自転車を使ったアクロバット芸を楽しませてくれたが。いつもより、ジャグリング といった他の要素が低かったように感じた。もちろん、良かったけれども。 あと、アフリカン・ソゲというパーカッション+ダンスのパフォーマンスも 観ることができた。Guinea からの2人が djembe と doundoun、Senegal からの 2人が djembe と sabar という、djembe 隊に sabar が加わったような、 西アフリカのパーカッションの混成の編成。それほど回数を聴いていないので、 演奏が巧いかは判断しかねるけれども、十分にノれる演奏だった。やはり、 生音は最高。去年の秋から暫く間が開いたけれども、久々に楽しむことができた。 日本人の女性4人のダンスが付いていたが、去年11月に代々木公園であった ヌーヴェル・アフリク・フェスティヴァルで djembe 隊に合わせて踊っていたのと 顔ぶれに重なりがあった。配っていたフライヤによると、リーダーの Amara Camara は Camara African Dance Art Expression というダンス・スクールを開催している ようなので、おそらくその生徒なのだろう。 全体としては、客弄りの巧いクラウン的なジャグラーが少なくて、ジャグリングや アクロバットにしても演劇、ダンスがかっていたり、もしくは、コミック・バンド のように音楽パフォーマンス的だったりするステージ性の高いものが多かった ように思う。それだけに、もっと主催者側で芸人を紹介するMCを入れて場作りを すれば良いのに、と思うところもあった。それだけでなく、ステージ周りの観客の 整理も含めて、野毛大道芸 や 大道芸ワールドカップ in 静岡 に比べ、ステージの 運営の不手際さが目だったのが、ちょっと残念だった。 2000/10/29 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕