『プラスチックの時代 ― アートとデザイン』 _Plastic Age - Art and Design_ 埼玉県立近代美術館, 浦和市常盤9-30-1 (北浦和), tel.048-824-0111, http://www.saitama-j.or.jp/~momas/ . 2000/10/7-12/10 (月休;10/9開;10/10,11/24休); 10:00-17:30 (金10:00-20:00). プラスチックという素材に注目して、美術とデザインを同時に扱った展覧会、 ということで期待して望んだのだが、前半の "Plastic Life / Plastic Culture" は 博物館的なデザインされた製品の展示、後半の "Plastic Art / Art of Plastic" は アート的な作品の展示、という感じで、別々の展覧会をくっつけたような感じの 展覧会だった。美術作品と製品を取り混ぜるような切り口の工夫をしてみて 欲しかったような気がする。 僕としては、デザインの方への期待が大きかったのだけれど、読む部分の多さに 比べて、実際の製品があまり置かれていなかったように感じたのが、ちょっと残念。 ざまざまなプラスチックの素材見本を並べて素材の質感を判るようにしたり、 成型技術や表面処理技術、着色技術の進展とデザインの関係について説明したりとか、 そういったことが展示ではまったくなかったのが、特に残念だった。アートや デザインに関する展覧会なのだから、素材そのものの質感や、形状や表面の木目、 色といったところにもっと注目しても良いように思うのだけれども。 前半はプラスチックの素材そのものというよりも、プラスチックに対して持たれて いたイメージや、戦争や環境問題などのそれをとりまく社会的な面に着目していた よう思うのだが、後半の展示がそういう社会性と関係する美術作品ではなく、 むしろ、もっと自律的でプラスチックという素材というものに着目した展示に なっているのもちぐはぐ。これも、別々の2つの展覧会をくっつけたような感じと なっている理由だ。 ただ、日本の若手の作家を取り上げた部分に関しては、最近あまりこまめに画廊を 回ってなかっただけに、横溝 美由紀 の化粧石鹸を淡い色を生かした作品 _Please Wash Away_ など、良いなあと思う作品に出会えたのは良かったが。 現在のようにプラスチック製品や繊維に淡いパステル・カラーが多用できるように なったのは、退色しずらい着色技術が開発されてからで、それ以前はプラスチック 製品は彩度の高い鮮やかな色かもっと濃い色でで着色するのが普通であったという。 (と、手元にないので確認できないが、金子 隆芳 『色彩の科学』 (岩波新書) あたりで読んだのだと思う。) プラスチック製品にあるポップで派手な色という イメージは、多分にこういった技術的な制約とも関係があったと、僕は思っている。 この展覧会の前半で展示されていた3脚の Panton Chair (1959-60) の鮮やかな 赤、青、黄の色にしてもこのような着色技術と深く関係しているだろうし、 後半の Tony Cragg のプラスチック塵を使った作品にしても、その鮮やかな着色に 注目してのものになっている。この展覧会では、そういったことには全く触れ られていないし、関連付けられてもいないが、例えば、こういった切り口から、 デザインやアートを織り交ぜて展示していくと、もっと面白い展覧会になったの ではないか、と、観ていて思ってしまった。 2000/11/07 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕