『ロシア・アニメ映画祭 2000』 (東京都写真美術館ホール, 2000/11/3-18) の Bプログラムで、1920年代の Avant-Garde 期のアニメーション映画の作品を5本 集めて上映されたので、観てきた。観た5本について、簡単なコメントを。 作品解説は http://www.netlaputa.ne.jp/~kinejun/russia2.html#b にある。 監督は他作品への言及がある場合のみ記し、基本的に省略してある。 『惑星間革命』 _The Interplanetary Revolution_ (1924) 『アエリータ』 (Yakov Protazanov (dir.), _Aelita: Queen Of Mars_, 1924) のパロディ映画と知られる映画。『星間革命』『宇宙革命』とも知られる。 国立映画技術学校制作ってことで、かなり素朴な仕上がりの切り紙アニメだった。 『アエリータ』のパロディという点については、火星に行って革命を起こす という点で『アエリータ』の主人公の技術者の夢想の部分を流用している、 と言われればそうだが。パロディというほどでもないと思ってしまった。 『ソビエトのおもちゃ』 Dziga Vertov (dir.), _Soviet Toys_ (1924) _Kino-Glaz_, (1924) や _Man With A Movie Camera_ (1929) など、モンタージュ 技巧を駆使した半ドキュメンタリーの映画で知られる Vertov のアニメ作品。 線画の切り紙アニメーション。舞台的な正面性のある画面構成 (Blue Blouse Theater の舞台の写真を思い出した) とはいえ、線画ですっきり構成した画面は かなり好みだし、ブルジョワや宗教勢力、労働者や農民の、類型的な描き方も 1920年代っぽくてグッときたが、手法的に凄いというわけではないと思う。 それより、この線画が、現代美術作家 Ilya Kabakov の描く絵本などの線画に とっても似ていたのが、興味深かった。パンフレットによると「当時の政治ポスター の漫画のアニメ化」だそうで、Ilya Kabakov の線画も、この Dziga Vertov の アニメーションを意識したというより、むしろ、この当時の政治ポスターの漫画を 意識したもののように思われる。 『スケート』 Yuri Zhelyabushsky (dir.), _Skate_, (1927) 線画のアニメーション。ブルジョワへの風刺は入っているが、基本的にドタバタ ・ギャグのアニメということもあって『ソビエトのおもちゃ』に比べて遥かに リズミカルな表現が楽しめる。画面を捉える視点も、『ソビエトのおもちゃ』の ような正面性のあるものに比べて自由度が高い。監督の Zhelyabushsky は、 『アエリータ』の撮影監督で、_The Cigarette Girl Of Mosselprom_ (1924) という、登場する役者が『アエリータ』とかなり重なった劇映画を監督している 人で、その作品の方が知られていると思うが。こんなアニメも撮っていたとは。 パンフレットによると、Zhelyabushsky は 『ボルヴァシカの冒険』 (1927) と いう人形アニメも撮っているそう。それも観てみたい。 『中国っ子の冒険』 _The Adventure of Chinese Kids_ (1928) 人形アニメ。かなり洗練された出来に感じた。逆に言うと、人形アニメは、 それほど洗練されてきていないのかもしれない。記録映像が用いられていたのだが、 「中国の農村」として使われていた映像が、どうも中国のもととは思えない (特に収穫期のは東南アジアと思われる) のが可笑しかった。 『郵便』 Mikhail Tsekhanovsky (dir.), _The Post_ (1929) Samuil Yakovlevich Marshak の詩の挿絵として書いたもののアニメ化だそう。 切り紙アニメで、動く絵本とでもいった味わい。1920年代といっても、 Avant-Garde というよりも Art Deco っぽい絵で、特に郵便配達夫の絵がおしゃれ。 世界的な郵便ネットワークの当時におけるモダンな意義を描いた感じも、良い。 トーキー版も存在するというのが気になる。Les Six の一人 Authur Honneger が 機関車の走る爆音を表現したという管弦楽曲 _Pacific 231_ (1923) の録音に 映像を付けた実験映画 (1931) なんて作品もあるそう。『郵便』での Leningrad - Berlin 間の列車の描き方 (特にトンネル) がとてもカッコ良かっただけに、 これも観てみたい。「形式主義」と批判された作品だそうだが。 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕 2000/11/16 (2000/11/15)