Studio Azzurro + Compagnia di Roberto Castello _Il Fuoco L'Acqua L'Ombra_ 国際交流基金フォーラム, 2000/11/26 19:00-20:00 - Dance: Compagnia di Roberto Castello (Roberto Castello, Alessandra Moretti, Stephania Beneditti, Silvia Traversi), Video: Studio Azzurro (Paolo Rosa, Fabio Cirifino, Davide Sgalippa, Mario Coccimiglio, Orf Quarenghi), Music: Giorgio Battistelli. Milano, Italia のマルチメディア・アート制作集団 Studio Azzurro と、 Lucca, Italia を拠点に活動する Roberto Castello のダンス・カンパニーの コラボレーションによる作品 (邦題は『炎・水・影 ― アンドレイ・タルコフスキーの ネイチャーダンスへのオマージュ』) の日本公演初日を観てきた。 Studio Azzurro のインタラクティヴなビデオ・インスタレーションというと、 人の寝姿と寝息をユーモラスに扱った _Chorus_ (『恋する身体』展, 宇都宮美術館, 1999) が、ユーモラスで印象に残っている。そして、今回の マルチメディア・パフォーマンスとでもいうこの公演も、同じような感覚で 楽しめた。 客席に向けてちょっと急に傾けられた白い正方形の台が、そのまま映像の スクリーンであり、ダンスが繰り広げられるフロアにもなっていた。ある意味で そのアイデア一発で展開しているパフォーマンスなのだが。他の手法に邪気を 見せずに、その手法に絞り込んでいるというという所が良かったと思う。 確かに、映像はステージの上だけではなく、舞台の上や客席の脇の壁にも 投影されていたけれども、それほど手法のミニマルさを乱すものではなかった。 ダンサーは床に投影される映像に合わせてパフォーマンスを繰り広げる。それは ダンスというよりも、映像と戯れている、という感じもある。水に輪を描く ように浮いた枝や木片の映像が投影の上をダンサーが辿るように飛び歩いて 見せたり、回るろくろを上から捉えた映像に対して足で蹴って回しているように 見せたり、と、シリアスになり過ぎずにちょっと映像―ダンスの駄洒落とでも いうようなユーモアを感じる所が、僕は気に入った。 床に投影された映像と、その上に展開する人とのコラボレーションといえば、 先に挙げた Studio Azzurro の作品、_Chorus_ もそうだった。この作品では、 床に人の寝姿が投影されており、観客がその上や近くに立つと寝苦しそうに 寝返りを打ち寝言を言うように映像が動くのだ。この作品では、床の上の映像と その上に立つ観客のコラボレーションとも言えるし、床の上の映像とその上で 動きまわる人々を併せて、変化する映像と音声を距離を置いた位置から楽しむ ことが出来る作品にもなっていた。この _Il Fuoco L'Acqua L'Ombra_ の公演は、 後者の観点でアイデアをより進めた作品とも言える。 _Churus_ と _Il Fuoco L'Acqua L'Ombra_ の違いといえば、投影される映像が 消える瞬間があるということ。それは単に映像が消えるのではなく、ステージ はもちろん会場全体が明るくなり、単に白い舞台とダンサーの生身の人間の 姿が剥き出しにされる。映像が投影されているときは舞台は投影されている 映像の光だけで薄暗く、ダンサーも薄明るく横からライトアップされる程度。 それが、その薄暗さが、立体感を減らしてダンサーが映像の中に溶け込んで いるように感じさせているし、人の動きから生々しさを奪い、映像的にさせて いるように思う。しかし、途中、2回ほどブレイクが入るかのように、ステージが 明るくなり、床が水平になり、その上でダンスが展開されると、ダンサー たちの動きが突然バタバタとしたものに感じられるのだ。映像の実体の無さを 痛感させられるようで、その落差も興味とても深かったし、映像との戯れ という感じの展開をシメるような効果があったと思う。 という感じで、ちょっとしたユーモアもある、映像とダンスのコラボレーションが 楽しめる舞台だった。 2000/11/26 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕