『8 1/2 の女たち』 _8 1/2 Women_ - UK/France/Germany/Benelux, 1999, color, 1h58m. - Written and Directed by Peter Greenaway. Cinematography by Sacha Vierney. - John Standing (Philip Emmenthal), Matthew Delamere (Storey Emmenthal), Vivian Wu (Kito), Annie Shizuka Inoh (Simato), Barbara Sarafian (Clothilde), Kirina Mano (Mio), Manna Fujiwara (Giulietta/Half Woman), Toni Collette (Griselda), Amanda Plummer (Beryl), Natacha Amal (Giaconda), Polly Walker (Palmira) 期待させたのは最初のうちだけで、進むにつれてどんどんテンションが落ちていく ように感じてしまった作品。残念ながらいまいちの映画だった。 どきついパチンコ店の内外装への着目など Greenaway らしいと思うし、それを 画面分割などを使って表示したり、読みきれないほどのテキストを画面に表示したり、 最初のうちは _The Pillow Book_ (1996) でも使ったような編集を駆使した画面 作りしたのだが。後半になるにつれて、そういう技法は控えめになって、むしろ 伝統的な画面作りになっていったように思う。不自然なライティングによって 遠近感が崩され、超現実的な感じになる画面も、印象に残るようなものは前半に 多かったように思う。前半で、技法に凝るのに力尽きてしまった、とでもいう 印象が残ってしまった。 _The Pillow Book_ の場合、途中でプツリと切れて、極端な世界に入っていく 感じもあったし、_8 1/2 Women_ の場合は、8人「半」の女性を集め始めるくらいの 所がそうだと思うのだが。画面作りが半端なせいか、吹っ切れなかった。そのため、 妙に俗っぽく話が展開する感になってしまったようにも思う。 Greenaway の場合、『数に溺れて』 (_Drawning By Numbers_, 1988) なんて 作品もあるように、数え上げて人工的に物語を進行させる、というのを好む所が あって、_The Pillow Book_ ではそれが十三の書の13だったわけだけれども。 この作品では、整数ではなく有理数の 8 1/2 になってしまった。そういう整数 からの逸脱をどう扱うのか気になったところもあったのだが。それも効果的じゃ なかったように思う。9人の女でも良かったような内容だったと思うし。実は、 それほど Greenaway はこういう点に拘っていないのかもしれない、とは思って しまったが。しかし、今後、さらに無節操に、無理数、複素数と広げて行って しまうのだろうか、などと、思ってしまった。 2000/12/3 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕