2000年に観た展覧会・公演・映画など10選。 第一位: The Primitive, _Cook!_ in 『大道芸ワールドカップ in 静岡 2000』, 2000/11/2-5, コメディ・パフォーマンス. UK/USA 出身の芸人トリオによる、ミュージカル仕立てのズッキーニ入りのオムレツ 料理パフォーマンス。客弄りも上手いし、社会階級を意識したような人物の 演じ分けなど、さりげなく社会風刺も入っているように感じるところも良かった。 大道芸ワールドカップの中では、公園のステージではいまいちだった、France の 男女二人組の Hector Protector も、市内のデパート店内を使ったハプニング・ パフォーマンスは、ショッピングするカップルという感じのやりとりも軽妙で 良かったし、何も知らない店員や通りすがりの客を巻き込んでいく感じも、 とても面白かった。 第二位: Philippe Decoufle & Compagnie D.C.A., _Triton (2ter)_, 世田谷パブリックシアター (三軒茶屋), 2000/10/24, ダンス/サーカス. バブリックシアターの中にサーカス小屋が登場。開演前の客入れからクラウンが キャンデーを客に配るところから、最後まで、進行を司るクラウンが楽しい舞台 だった。もちろん、テント状の櫓の頂点の滑車を通したワイヤで繋がれた男女2人 による半空中でのアクロバット芸、伸縮するロープを使ったアクロバット芸など、 アクロバティックな動きも楽しかったけれども。 第三位 『ブック・オブ・ライフ』 (Hal Hartley (dir.), _The Book Of Life_), アップリンク, ULD-007, 2000, DVD. 画面は常に10度ばかり傾いており、これとブレが合わさって、手持ちカメラによる スナップショットのような、画面の軽さと不安定さが、効果的なDVによる作品。 といっても、封印を解くべき "The Book Of Life" が PowerBook だったり、 Christ と Devil の会話がかつての同僚サラリーマンの会話風だったり、という 設定が、そして、Hartley らしい優柔不断な登場人物が、いちいち面白い映画 だったのだけれど。 第四位 Heiner Schilling, _The Entropic Forest_, 横浜美術館アートギャラリー & ヨコハマ・ポートサイド・ギャラリー, 2000/5/27-6/25, 美術展. ヨコハマ・ポートサイド・ギャラリーの、一つの壁に並べられた駒沢球技場を捉えた 3枚の写真では、一つはゲートボール、一つは弓道、一つは綱引きが、フィールド 上で繰り広げられている様子が捉えられている。同じパターンの反復という形式が、 異なる社会的文脈から生まれたスポーツの収容を可能とする、コンクリート打ちの 近代的な球技場の方形のミニマルな空間の普遍性を際立たせるようであり、 その一方で、中で行われている競技の社会的文脈の違いを、写っている人々の 年齢層や服装、動きの激しさ、といった写真の中に反映されているものを通して 見せられているようだった。 第五位 Studio Azzurro + Compagnia di Roberto Castello, _Il Fuoco L'Acqua L'Ombra_, 国際交流基金フォーラム (溜池), 2000/11/26, マルチメディア・パフォーマンス, 床に投影される映像に合わせてのダンス・パフォーマンスだが、シリアスになり 過ぎずにちょっと映像―ダンスの駄洒落とでもいうようなユーモアを感じる所が、 楽しい舞台だった。 第六位 Christina Dimitriadis, Galerie Deux (都立大学), 2000/5/11-8/5, 美術展. くっきり鮮明に写った室内に、人物が半透明に写っている。通常のポートレイトの 場合は人物が中心であり、室内の様子などはその「背景」であるわけだけれど、 その前景と背景が逆転させられ、ポートレイト的なポーズを残しつつも、 インテリア雑誌に載るようなインテリアの写真に人物像を仮設したような感じが、 とても良かった。 第七位 『ルナ・パパ』 (Bakhtiar Khudojnazarov (dir.), _Luna Papa_, 1999), 映画. Tadjikistan の小村を舞台に繰り広げられる、どたばた悲喜劇。悲劇をどたばた的、 ファンタジー的に喜劇であるかのように描くところも、現実を異化させるような 強さがあったと思うが。主演女優の明るさ可愛さが一番この作品を救っていた かもしれない。 第八位 『デペロの未来派芸術展 ― 20世紀イタリア・デザインの源流』, 東京都庭園美術館, 2000/4/4-5/34, 美術展. _Le Rivista Delle Marionette (I Balli Plastici)_ (『人形のパレード (造形バレエ)』) のずらっと並んだカラフルでロボット風の人物や動物の人形が、 とてもユーモラスで楽しそうな雰囲気を作り出しているのが、とても良かった。 このイタリア未来派の美術家・デザイナーが手がけた広告美術や日用品のデザインも、 Art Deco の洋館である旧朝香宮邸を使った東京都庭園美術館の室内にぴったりと 合っていた。 第九位 『三宅 一生 (Issey Miyake, _Making Things_)』, 東京都現代美術館, 2000/4/29-8/20, ファッション展. ゲストの美術家とのコラボレーションなど面白みに欠ける展示があったとは思うが、 _Jumping_ の _Pleats Please_ 系の服がたくさん天井から吊るされ、それが間欠的に 上下に揺すられるという展示は、服の動きが生む変化た楽しい展示になっていた。 ダンスパフォーマンスの衣装として使われているところを観てみたい、と思う。 第十位 野村 仁 『生命の起源: 宇宙・太陽・DNA』, 水戸芸術館現代美術ギャラリー, 2000/8/5-10/15, 美術展. ソーラーカーによるアメリカ横断のプロジェクト『HAASプロジェクト』に関する 展示など退屈な展示も多かったが。液体酸素の青い液体が透明な魔法瓶に入れられ、 さりげなく並べられているというのが、作品というより、危険物という点で わくわくしてしまった。 次点: 『越後妻有アート・トリエンナーレ2000』, 2000/7/20-9/10, 美術展. 広域に広がる作品を駆け足で一日で観て回ったこともあり、正直に言えば、規模の 割に強い印象を残さなかったのだが。それでも、James Turrel, _House Of Light_ (川西町) は照明デザイン色濃かったものの、いずれ泊まりに行きたいと思う程の ものはあったし、西 雅秋 『Bed for the Cold』 (津南町) の用水池に浮かぶ 大きな白い輪も印象に残っている。松代町の城址でも、野外彫刻を観ながらの ハイキングを楽しむことができた。 番外特選: David Claypatch (a.k.a. That Amazing Guy), ドックヤード・ガーデン脇, 2000/1/9, 大道芸. フェスティヴァルにはあまり無い思いがけない客との駆け引きが楽しめるのが 普段の街中での大道芸の醍醐味なのだが。このときの、場に引き出された女の子が Claypatch とやりとりしながらもじもじする様子からバルーンを貰って大喜び する様子は、今まで大道芸を観てきた中でも、最高の場面だった。 2001/1/1 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕