『テレビゲーム展 ― BIT GENERATION 2000』 水戸芸術館現代美術ギャラリー, 水戸市五軒町1-6-8, 029-227-8120, http://www.arttowermito.or.jp/ . 2000/10/28-2001/1/28 (月休;1/8開,1/9休;12/28-1/3休), 9:30-18:30. http://www.tvgame-museum.com/ . ゲームを実際にプレイできるように展示されているのは良かったが、薄さを感じた 展示だった。それは、展示されていたゲームの数が少なかったからというよりも、 年代順になっていたとはいえ、体系的に分類しよう、という意図が欠けていたから だと思う。実際、この展覧会において提起しているテレビゲームに対する視点は、 『スーパーマリオ』シリーズにおけるドット絵からポリゴンへという描画の変化の 展示に象徴的なように、CPUのビット数が上がって処理速度が上がった、という 年代を追った技術的な進歩という程度だった。そのような視点と、単に年代順に 漠然とゲームを並べるという展示が、無関係だとは思わないし、そういう単純な 視点に基づいた展示が、この展覧会の薄さを感じさせる原因だ。 ゲームの社会的な面についての視点も、『ポケットモンスター』のグッズを展示 した部屋で提示した「新聞の社会面から経済面へ」(目新しい現象からビジネスへ) という程度で、それ自体が、テレビゲームの話である必然性も感じられないものだ。 ゲームの表現体系についても、「テレビゲームにおける文法」というビデオが 流されていたが、僕が観た限りでは、様々なゲーム・ジャンルにおける操作体系と その相違、というような話ではなく、ゲームの「物語」「世界観」のレベルの話で、 文法というより修辞法の話だった。ゲームの操作体系が、最もゲーム固有性が 高いと思われるだけに、その展示にほとんど見られなかったのは、かなり不満に 感じた。 というわけで、ゲームをジャンルに分類し、ジャンルの形成・発展史を俯瞰しながら、 新たなジャンル形成の契機になったゲームを、それを可能とした新技術、もしくは、 それ以前のゲームと異なる画期的な操作・表現体系、もしくは社会的な環境変化を 示しつつ展示する、という方が、ゲームに興味をさほど持たない人にとっても、 興味が持てる展示になったように思う。 もちろん、万人に納得いくようなジャンル分けやゲーム史を提示するというのは 困難だし、その必要も無いと思う。しかし、それに反対する動きを生むということ まで含めて、何らかの分類体系と歴史観を提示することが、たとえいささは反動的 だとはいえ美術館・博物館の役割だと思うし、正統的な分類体系や歴史観も無い テレビゲームをサブカルチャー以上のものとして、テレビゲームに普段は興味を 持たない人に対して「文化」として提示しようとするなら、必要とされることだと 僕は思うのだ。今後の、『テレビゲーム・ミュージアム』の活動には、この点を 期待したいと思う。 2001/1/7 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕