『出会い』 _Encounter_ 東京オペラシティアートギャラリー, 新宿区西新宿3-20-2東京オペラシティタワー3F, tel.03-5353-0756. http://www.tokyooperacity-cf.or.jp/ 2001/1/21-3/18 (月休;2/11休), 12:00-20:00 (金土12:00-21:00) - Anne Daems, Plamen Dejanov & Swetlana Heger, Jan Fabre + Ilya Kabakov, 島袋 道浩 + 野村 誠, 渡辺 英司, Jun Yang. 展覧会関連イヴェントとして行われた、刀根 康尚 のパフォーマンスに併せて、 この展覧会を観てきた。パフォーマンスの方は会場に入りきらないほどの人出 だったが。最初の _Molecular Music_ (1982-85) の方は、漢詩や万葉集の詩の 朗読のリズムに合わせて、文字の発声をノイズ化したものと、漢字をイメージ化 した映像を投影するというもの。映像はビデオではなくフィルムという質感は あるし、明瞭な発音とノイズ化したもの、という差はあるものの、_Sesami Street_ のような子供向けTV番組での、アルファベットや数字を教えるために読み上げて いく歌に付けられるような画像やアニメーションの、漢字版とでもいう雰囲気。 続く、_Wounded Man'yo 2000_ は音のみだが、これは、Yasunao Tone _Solo For Wounded CD_ (Tzadik, TZ7212, 1997, CD) から予想された以上の 音のものではなかった。とはいえ、家では充分な大きさで聴くことは希なだけに 壁が床が震える程度の音で聴けたのは良かった。クラブのようなもっと音の 良いハコで聴いてみたいとも思ったけど。 しかし、_Wounded Man'yo 2000_ にしても、かつて、コンピュータ (Sun の ワークステーションとか) で、音楽データではないファイル (OSのカーネルとか) をオーディオ・デバイスに直接送ってノイズを出して遊んだ (いわゆる、 cat vmunix > /dev/audio) ことを思い出させるものだし、_Molecular Music_ (1982-85) にしても、子供番組のアルファベット教育用の映像クリップと同じ ような感覚を感じるし。ノイズ的な音で一見強面な感じだが、前衛的・実験的精神 というより、他愛無い遊び心というものを感じた、そんなパフォーマンスだった。 それは、この展覧会の他の展示にも感じるもので、例えば Jun Yang の証明写真用 のインスタント写真を使った4枚続きの写真で、サラリーマンからスーパーマンへ 着替える様子を捉えた _SM_ にしても、1980年代の『ぴあ』にあった、証明写真用 の4枚綴りの写真を使って作った4コマ漫画写真の、読者投稿コーナーを思い出さ せるものだった。(そして、『ぴあ』の投稿の方が、アイデアや諷刺、ユーモアに 富んだものが多かったような気がするのだった。) Anne Deams のスーパー マーケットでの迷子商品の展示にしても、中古音盤店の棚で、ジャンル違いの 音盤を見つけたり、他の人に取られないように他のジャンルの棚にレア音盤を 隠したり、というエピソードなどを思い出させるものだが、そのときの、ちょっと した遊び心を思い出させるものなのだが。ま、Jun Yang や Anne Deams などは、 展覧会の作品の中でもましな方だと思ったけれど。 というわけで、日常的なちょっとした遊び心を感じさせる展覧会ではあるの だけれども、わざわざアートだの展覧会だのと言ってやることでもないんじゃ ないかなぁ、とふと思ってしまう、そんな展覧会でもあった。 2001/1/21 嶋田 Trout Fishing in Janan 丈裕