『ポスターで観る「無声時代後期のソビエト映画」Part II』 東京国立近代美術館フィルムセンター展示室, 中央区京橋3-7-6 (京橋), tel.03-3272-8600, http://www.momat.go.jp/fc.html . 2001/1/9-3/24 (日月休;2/20-24休); 10:30-18:00. 1930年代に日本で開催された映画展覧会『ソヴェート映画 ポスタースチール展』の 際に主催者に譲渡されたポスターのパッケージを母体とする約140枚のコレクション の展覧会。3年前に Part I が開催されたのだが、それは見逃している。今回は 修復を負えた残り半分の展示である。 Aleksandre Rodchenko や Stenberg Bros. のように有名なデザイナだけではなく、 ほとんど名前が知られてないようなデザイナの作品も多かった。さらに、時期的にも、 構成主義的な雰囲気が薄れ、リアリズムを感じる作風になる、一見して1930年代の ものと分かるようなポスターもそれなりにある。その時代の変化を感じることが できるという点でも、面白い。Susan Pack, _Film Posters of the Russian Avant-Garde_ (Taschen, ISBN3-8228-3928-8, 1995) とそれなりに重なりはあるが、 初見のものも多く新鮮に観られた。 ちなみに、一番気に入ったのは、『大金持ちの人形』 (Sergei Komarov (dir.), _Kukla S Millionami_, 1928) のもの。デザインは Semyon Semyonov。 顔はイラストのまま身体をストライブで幾何的に表現した男性を三回反復して 上方に配したり、鏡像に同じ男性を左右に配したり、という手法から生じる リズム感が最高。それに囲まれた中央の女性の茶目っ気ある表情とポーズも 生きている。女性俳優の雰囲気も1920年代のモガっぽい感じだし。ポスターの中で 三回反復された男性俳優は、1920年代の数々の Soviet 映画で名演技を見せている Vladimir Fogel。コミカルで面白そうな雰囲気で、ぜひ映画も観て見たいと思う ようなポスターだ。 1930年代のポスターでは、『陽気な連中』 (Grigori Aleksandrov, _Veselye Rebiata_, 1934) のポスター。六連符の中で肩を組んで踊る五人組、というのが 楽しそう。この Sergei Eisenstein の片腕助監督として知られる Aleksandrov に よる映画は、確か、無声映画ではなく、トーキー期初期のコメディ・ミュージカル だったはずなのだが。Aleksandrov は『サーカス』 (_Tsirk_, 1936) や 『ヴォルガ・ヴォルガ』 (_Volga-Volga_, 1938) などのコメディ・ミュージカルを 多く撮っていることで知られているが、僕はいずれも観たことが無い。 このポスターを観て、ぜひ観たくなってしまった。そんな気にさせる力のある ポスターだと思う。 確かに、『ポスター芸術の革命 ― ロシア・アヴァンギャルド展 ― ステンベルク 兄弟を中心に』 (東京都庭園美術館, 2001) ほどデザインだけで楽しめるという ものは多くないけれども、それでも、これを手がかりに映画を観て見たい、と思う くらいには楽しめる展覧会だった。 2001/2/18 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕