杉本 博司 『華王院三十三間堂千体仏活動映画映像加速仏映及手刷特殊版画陰翳礼讃』 ギャラリー小柳, 銀座1-7-5, tel.03-3561-1896, http://www.bekkoame.ne.jp/~kimata/index.html . 2001/4/27-5/25 (日祝休), 11:00-19:00 『華王院三十三間堂千体仏活動映画 ― 映像加速仏映』というビデオ作品と、 『手刷特殊版画 ― 陰翳礼讃』という特殊なプリントの写真(?)からなる 杉本 博司 の展覧会。杉本というと、水平線を画面を二分するように捉えた 『海景』シリーズのような、静的な構図でミニマルな印象を受ける白黒写真 作品を作ってきたわけだが、ここにきて、様々なメディアを用いるように なってきている。 『陰翳礼讃』は、1999年4月にギャラリー小柳で観た、火の付いた和蝋燭と 白黒ポジフィルムの組みからなるインスタレーションのヴァリエーション。 今回は、蝋燭が燃え続けている間露光し続けた白黒写真を、和紙へ版画風に プリントしている。いかにも渋い質感ではあるけど、狙い過ぎな感もするのは、 その質感が個人的にしっくりこなかったからかもしれない。 ビデオ作品は、1996年のハラ・ミュージアム・アークでの個展で観た写真 作品『千体仏』のバリエーション。『千体仏』の何枚もの写真をこま送り風 (若干のフェードインフェードアウトを噛ませていると思うが) に繰っていく ビデオ作品。次第に早送りになって、最後には全ての写真を重ね合わせた ようなぼやけた静止画になって止まるというもの。杉本 の写真作品には、 『千体仏』や『海景』のような似たような構図の写真を多数並べることによる 写真間の差異を楽しむ作品と、『陰翳礼讃』や『劇場』のような長時間露光 による重ね合わせの結果の妙を楽しむ作品とがあるわけだが。このビデオ作品は 時間軸へ展開することにより、差異と重ね合わせの妙を一度に実現しよう、と でもいう作品になっている。そのアイデアは判るのだが、ビデオというメディアは、 彼の白黒写真のプリントの質感とは正反対。壁面へのプロジェクタによる投影は 解像度の粗さや色むらが目立ち、写真作品の持っていた落ち着いた感じを 軽く薄っぺらくしてしまったように思う。複数のスライドプロジェクタか 映画フィルムを使った投影にすれば、ぐっと落ち着いた質感になったように 思うし、その方がこの作品に似合っているように思うのだが。 杉本 の作品に限らず、宮島 達男 のカウンター作品にしても、CGやビデオ プロジェクタを用いると、コンセプトばかりが前に出てきてつまらなくなって しまうような気がする。物理的な実現が困難なものに対して仮想的に実現する ために使われているようなメディアではあるが、扱いが困難なのだなぁ、と つくづく思ってしまった。 と、二作品とも、アイデアはそれなりに判るけど、作品としてはいまいちと 感じてしまった、そんな展覧会だった。もう暫くすると、メディアの扱いなども こなれてきて楽しめる作品になるのかなぁ、とも思ったが。 2001/5/4 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕