規模縮小のための改装後の第一弾の展覧会を観てきた。 Studio Azzurro, _Tamburi_ NTT ICCギャラリーA, 新宿区西新宿3-20-2東京オペラシティタワー4F (初台), tel.0120-144199, http://www.ntticc.or.jp/ . 2001/4/20-6/10 (月休), 10:00-18:00 (金10:00-21:00) インタラクティヴなビデオ・インスタレーション作品を多く制作してきている Milan, Italy の作家集団 Studio Azzurro の展覧会。新作 _Tamburi_ の他、 『恋スル身体』展 (宇都宮美術館, 1999) に出展されていた _Coro_ (1995) が 展示されていた。 Studio Azzurro を初めて意識したのは、_Coro_ を観たとき。床に男女約20名の 等身大の寝姿をビデオ投影した作品で、観客が投影された人に近づいたときのみ、 寝返りを打つように映像が動き出し寝言のような声が出る、という作品。 仕掛けというか観客に要求する操作の単純さはもちろん、寝返りを打つ人々の 動きや寝声のポリフォニーといった感じが、ユーモラスで楽しい作品だった。 それは、この展覧会でも変わらなかった。 新作 _Tamburi_ も単純な作品で、大きな太鼓の皮に掌の映像を投影した作品。 掌の上には様々な小物が乗っている。太鼓を叩くと、叩く位置によって画像が 動き、小物が太鼓の中央に来るとあがり、というか、掌が閉じて会場の別の 場所の地球儀上の上に掌の映像が飛んでいく。ゲームというには、ちょっと 簡単だが、その手の軽い感覚で楽しめる。太鼓のドンドンという音が響いている 様子も面白いし。 連休中ということもあってか子供連れの客が目だったのだが、_Tamburi_ に しても _Coro_ にしても、子供が素直に楽しんでいたのが印象的だった。 いずれの作品にしても、インタラクティブな操作として観客に要求している ことは非常に単純で習熟の必要がほとんど不用なものであり、その操作に対する 反応も非常に直接的で因果関係が把握しやすいものになっている。アイデアを 盛り込み過ぎて複雑にすることなく、アイデアを少なめに絞っているところが 巧いように思う。パンフレットなどからもコンセプトを深読みすることも できるが、それ以前の一次的な体験のレベルでユーモアを感じ、キャッチの ある良い作品だと思う。 もちろん、複雑なルールや操作体系を要求したり、操作と反応の因果関係が 直接的でないことが、必ずしもダメだとは思わない。TVゲーム作品などでは、 このような複雑で間接的なインタラクティヴ性が生きるものもあるとも思う。 しかし、展覧会でのインスタレーションのような作品形態においては、 観客が操作体系を習熟するのは困難であり、複雑なインタラクティヴ性が 鑑賞において生きるとは、僕は思わない。コンセプトとしては面白くとも、 実際の鑑賞しては観客はろくな操作もできずに終わってしまうものが多いと 思っている。Studio Azzurro はそういった点をちゃんと計算に入れてうまく アイデアを絞り込んでいる感がある。それが、彼らの作品の魅力の一因に なっているように思う。 去年秋に観た、ダンスカンパニーとのコラボレーション Studio Azzurro + Compagnia di Roberto Castello, _Il Fuoco L'Acqua L'Ombra_ にしても、 アイデアの絞り込みとユーモアのセンスが良かったと思っているのだが。 会場に資料として置いてあった、Studio Azzurro, _Ambienti Sensibili_ (Electa) という様々なパフォーマンスとのコラボレーションの様子を集めた 本を観ていても、とても面白そうで、こういう展覧会はもちろん、もっと パフォーマンスとの共演を日本でも公演して欲しいようにも思う。 2001/5/6 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕