『ミニマル マキシマル ― ミニマルアートとその展開』 _Minimal Maximal - Minimal Art and its influence on international art of the 1990s_ 千葉市美術館, 千葉市中央区中央3-10-8, tel.043-221-8600, http://www.city.chiba.jp/art/ . 2001/4/10-6/3 (月休;4/30開;5/1休), 10:00-18:00 (金10:00-20:00). - Carl Andre, Miroslaw Balka, Larry Bell, Daniel Buren, Philippe Cazal, Dan Frevin, Liam Gillick, Felix Gonzalez-Torres, Hans Haacke, Mona Hatoum, Franka Hoernschemeyer, Donald Judd, Dieter Kiessling, Will Kopf, Sol LeWitt, John McCracken, Robert Morris, Christian Philipp Mueller, Bruce Nauman, Dan Peterman, Michelangelo Pistoletto, Fred Sandback, Karin Sander, Yuji Takeoka, Tony Tasset, Piotr Uklanski, Rolf Walz, Lawrence Weiner, Heimo Zobernig, John Issacs. 1998年に Neues Museum Weserburg Bremen で始まった、いわゆるミニマルな 作品を集めた展覧会。けっこう有名どころを集めており、作品を観たことが ある作家が半数を占めるわけで、新鮮味は少ないが。基本的に、ミニマルな 表現は好きなので、けっこう楽しめた展覧会だった。 展覧会を観ていて、感じたのは三つの傾向。一つは、色使いや形状を単純で 最小限なものに抑えることによって、素材の質感が際立つもの。もう一つは 空間認識的なコンセプトが際立つようなもの。それから、既に街中に溢れる ミニマルな近代的なデザインに言及するもの、といったところか。ミニマルな 傾向のある作品の楽しみ方は、いろいろあるとは思うけれども、僕が楽しめる のは主にこの三パターンと言った方が正確だろうか。ミニマルといっても多様 な楽しみ方が可能だというとこが意識できたのが、これだけ様々な作家の作品 をまとめて観ることができた展覧会の一番の収穫だったろうか。 もちろん、ここで挙げたミニマルな作品の三つの要素は完全に独立でもないし、 それぞれの作品はその要素を様々な比重で持っている、と思うけれども。 今の僕にとっては、質感が際立った作品が、一番楽しめたように思う。 今の僕にとっては、LeWitt より Judd 、というか。その三つの要素のどれが 最も重要だとか、そういうことは無いと思っているし、それぞれに面白いと 思うところがあったけれど。というわけで、面白かった作品について個別に言及。 最も気に入ったのは、Mona Hatoum の _Marbles Carpet_ (1995)。無色透明な ビー玉を長方形状に敷き詰めた作品なのだが。ビー玉は、部分的に最密な部分が、 格子欠陥の面で継ぎ接ぎになっている、という感じだのだが、格子欠陥が 光の反射で浮き上がってまだら模様に見えるのだ。X線解析で見るような結晶を、 そのまま可視光の縮尺までおもいっきり拡大したようなもの、というか。 ま、そういうことより、光のむら加減が良かったのだが。 Karin Sander の _Wallpiece, Polished_ (1996/2001) は、壁を長方形に ツルツルに研磨した作品なのだが。壁にかけられた絵のようにはなっていな かったこともあり、最初のうちは見落としていてどこに作品があるのかわから なかった。そういうさりげなさが気に入ったり。 空間認識的な面白さでは、Fred Sandback, _Untitled #7_ (1968/83) 。 一本の太い針金を曲げて立方体の片の一部だけを針金で作りこむ、という類の 作品で、LeWitt の作品に近いわけだけれども、針金が無い所にも片がある ように感じるという強さが、この作品に際立っていて、それが面白かった。 ミニマルな近代デザインへの言及的な作品としては、Ikea (Sweden の 「無印良品」的な家具メーカー) の家具を使った Christian Philipp Mueller, _Neue Arbeit aus Ikeamoeeln_ (1998) や、ダンスフロアのミニマルなフロア 照明パターンに着目した Piotr Uklanski, _American Minimalism Meets Saturday Night Fever_ (1996/1998) 。日本でいうと、中村 政人 の 『トラウマトラウマ』『QSC+mV』あたりと共通するし、そちらの方が良い かなぁ、と思うところもあったが。Uklanski の作品では、実際にダンス音楽か それなりのヴォリュームでかかっていたのだが、そういうコンセプトなら、 音楽も minimal techno にすれば良いのに、とか、思ってしまった。 その三つの傾向のいずれからも微妙な距離感を感じて、それが良いのが、 Felix Gonzalez-Torres, _Untitled (Republican Years)_ (1992)。 銀色のラップに包まれたキャンデーを床に敷き詰めて、客に持ち去らせる 作品は、日本でも何回か展示されて知られているわけだし、綺麗な銀色で 敷き詰められた様子は、この展覧会の Hatoum の作品と共通するような 綺麗さがあって、好きなのだけれども。今回の作品はそれと同じような コンセプトの作品。ただし、キャンデーではなくて、白地に二重の黒枠が 施されただけというミニマルでかなり大判のポスター。置かれている様子も 地味だし、味わえるキャンデーに比べて、ポスターは持っていても楽しくは ないのは、物足りなかったように思う。 2001/5/20 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕