原 弘 『原 弘 のタイポグラフィ』 ギンザ・グラフィック・ギャラリー, 中央区銀座7-7-2DNP銀座ビル (銀座) http://www.dnp.co.jp/gallery/contents.html, tel.03-3571-5206 2001/6/5-6/27 (日祝休), 11:00-19:00 (土11:00-18:00) 日本のモダンなグラフィック・デザインの草分け、原 弘 の回顧展。1920年代から Bauhaus を始めとする Avant-Garde なデザインを積極的に採り入れてきたデザイナー。 一階は戦前期の展示で、同時代の Bauhaus や Russian Avant-Garde のデザインを 思い浮かべながら見ると、とても興味深いものがあった。当時の Avant-Garde な グラフィック・デザインの有名なマニフェストの一つ Jan Tschichold, _Die Neue Typographie (The New Typography)_ (1928) の 原 弘 による 翻訳本も展示されていた。 『モボ・モガ 1910-1935』展 (神奈川県立近代美術館, 1998) にも展示されていた (この回顧展でも展示されている) 花王石鹸の包装デザイン (1930) は、Avant-Garde というより Art Deco 的な装飾を感じさせるものだったが。戦前期のデザインの 多くはむしろ Avant-Garde 的なものが多かったことを、この展覧会で知った。 特に、木村 伊兵衛 の遠近短縮的なアングルのクレーンの写真を大胆に使った 『大東京建築祭』のポスター (1935) など、Russian Avant-Garde なデザインに 負けないカッコ良さだ。その後、その手の手法を用いての戦争プロパガンダの仕事が 増えていくところも時代を感じさせられるし、日本における Avant-Garde の位置を 考えさせられるものもあるのだが。 地下の戦後のものは、特に1960年代以降、現在のグラフィックデザインと大きく 変わらないと感じるものが多かった。まだ、情報を詰め込み過ぎていない1960年代 らしいポスターなど、カッコ良いとは思ったけれど。やはり、戦前のモダンな グラフィック・デザインの受容期の作品が見所だったように思う。多分に、自分の 興味が Avant-Garde 期に偏っているせいもあると思うが。 Bauhaus や Russian Avant-Garde のグラフィック・デザインに興味がある人なら、 それらが同時代に日本にどう受容されたのか軽く概観できる、良い展覧会では ないだろうか。 2001/6/17 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕