『イームズ・デザイン』 Charles & Ray Eames, _Eames Design_ 東京都美術館, 台東区上野公園8-36 (上野), tel.03-3823-6921. 2001/8/10-9/30 (月休,9/24開,9/25休), 9:00-17:00. http://www.eames-design.net/ 駅のベンチなどで多用されている、3次元成形FRPによる量産椅子の原型を作った アメリカのデザイナー Charles & Ray Eames の展覧会。Library of Congress と Vitra Design Museum が企画し、1999年にアメリカで始まった国際巡回展 _The Work of Charles and Ray Eames: A Legacy of Invention_ が、ついに 日本に回ってきているのだろうか、と期待していたのだが、なんとそれは、 現在は MAK Vienna, Austria で開催中。そうではなく、日本での企画だった。 それで資料が分散しているということもあるのか、2F〜B1Fと3フロアも使って いる割には、若干薄さも感じる展覧会だった。2F〜1Fでは、確かに多くの椅子や 家具が展示されていたのだが、同じ型の椅子のヴァージョン違い、とでもいうのが 並べられていた。確かに、こうして並べられれば制作年によっての微妙な作りの 違いも判るが、Eames のデザインの変遷を知るためにしては過剰に過ぎて、 コレクターが拘るような差異に過ぎないものも多いし。少数しか制作されなかった 珍しいものにしても、コレクターズアイテムに過ぎないようなものが多かった。 確かに、Eames コレクターや家具マニアには堪らない展示なのかもしれないが。 もちろん、細部に拘ることの意味も無いとは思わないけど、もっとポイントを 押さえた簡潔な展示にして良かったように思う。むしろ、多くのヴァージョン違いの 椅子がずらっと並べられた展示は、むしろデザインのポイントをぼやかしてしまって いたように思う。正直に言って、Eames のデザインについて良くわかった、という 気はしなかった。それまでの、椅子に関するデザイン展を通して知っていた 知識以上のものは、多くは得られなかった。 _Powers Of Ten_ (1977) は、そのラフスケッチ版 (1968) と併せて、大画面で 上映されていて、それは良かったのだが。10の25乗から10の-16乗までを旅して そのスケール感を直感的に捉えさせるようなところは、話としていて聞いて はいたが、実際に観てもよくできていると思う。スケッチ版で、限られた技術を 用いてどういう映像が作りたいか表現している、というのも凄いと思ったけれど。 しかし、他の映像作品の展示は、椅子や家具の展示に圧されていささかお座なり。 混雑のためもあるかもしれないが、もともとほとんどスペースが取られておらず、 ほどんど立ち止まって観られないような場所で、申し訳程度にブラウン管モニタ 画面で流されていた。入口で、インタヴュー・ビデオをプロジェクタとブラウン管 モニタ数台でインスタレーションを組むくらいなら、短編ビデオの上映のための スペースを確保した方がましではないだろうか。 Charles & Rey Eames が作った短編映画は企業のPRビデオも多く、また、 科学・技術の展覧会の展示のデザインも多く手掛けていたのだが、それに関する 資料は、申し訳程度。そういった仕事にも興味があったのだが。 Eames のデザインの仕事についてある程度は知ることはできるけど、全体としては、 Eames デザインやミッドセンチュリーモダンの家具のマニアやコレクターに 向けられた展覧会だったのかなぁ、と思ってしまった展覧会だった。 ま、こういう展覧会が _The Work of Charles and Ray Eames: A Legacy of Invention_ とは別に日本で企画される、というのも、日本らしいのかもしれないが。 2001/09/16 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕