『大道芸ワールドカップ in 静岡 2001』 _Daidogei Worldcup in Shizuoka, 2001_ 駿府公園, 青葉シンボルロード, 等, (静岡市内) 2001/11/1-4 http://www.daidogei.com/ 今や世界的にも名前を知られるようになってきている、日本最大規模の大道芸の フェスティヴァル。今年は十周年ということで、大規模なナイトパフォーマンスが 特別に2つ用意されていた。今年は、11/1-3の2泊3日で観に行ったのだが、 3日は雨に降られて、実質2日。1,2日は平日ということもあり、あまり混雑 しておらず、のんびりとした感じで、20余りの演目を観ることができた。 大規模なナイトパフォーマンスは、さすがに大仕掛けだけある、と感じさせるもの。 特に、France のカンパニー Transe Express による人間モビール _Mobile Homme_は、 クレーンに吊るされた巨大なモービルに乗って、空高く楽隊が演奏する中、 女性パフォーマーが空中ブランコをするというもの。遠くて小さく見えるため、 ブリキのおもちゃの人形が動いているかのような、可愛らしさもあったりして。 客をかき分けて演奏しながら登場する、というところから良かったとは思うけど。 もう一つのナイトパフォーマンス、France のカンパニー Inko'Nito et Cie des Quidams は、スティルトにバルーンの被り物を合せたものがウリのようだが。 _Reve d'Herbert_ は、動きの面白さというより、シンプルながら可愛らしい形に 照明を内蔵、というその造形の良さで成功していたように思う。 大仕掛けといえば、Australia の 5 Angry Men による吊るされた綱を引いて 鐘を鳴らす音と動作からパフォーマンスを組みたてていく _The Bells_ もあった。 確かに動きは激しかったけれども、もっと空中芸的な要素が強いかと期待していた だけに、いささか地味な印象を受けてしまった。 去年は、The Primitive や Chantier Mobil のようなコメディなカンパニーが秀逸 だったという印象がある。今年も、Spain の El Espejo Negro によるフラメンコな 人形劇+コメディ劇 _La Cabra_ が、そのいい感じの馬鹿馬鹿しさと客弄りが 楽しめた。 しかし、今年はむしろ野外劇のカンパニーが良かったように思う。特に、France の カンパニー L'Elephant Vert による _Faunemes_ は、4人の役者が、衣装の中に スピーカーを仕込んで、効果音と喉に仕込んだコンタクトマイクによるほとんど 声にならない音だけをうまく使いながら、それに合せた動きで、衣装や音も併せて Sci-Fi 仕立ての物語を巧く展開。物語があった、とはいえ、途中から観ても それなりに楽しめるものだったと思う。3つのステージを場所を動きながら、 うまく客を巻き込んでいくあたりもさすが。今年観た中で最も楽しめた演目だった。 4人の役者それぞれの音をどうシンクロさせているのか、とか、テクニカルな 実現方法も、とても気になった。 やはり France 出身の La Muse Gueule による _La Trop Courte Histoire de l'Homme-Calebasse_ も、ジャグリングやパントマイムを組み合わせているけれど ちょっとした劇仕立て。コメディ的な要素も無いわけではないが、ちょっと客を 突き放した感じで、モダンというよりシュールな感じ。随伴音楽も生演奏で、 それも、ディジェリドゥーや親指ピアノを用いて、音使いも繊細な感じ。 渋目の表現で僕はとても気に入ったけれども、いささか地味かも。大道芸ではなく、 ちょっと小さめな箱でやっても良いような内容だったと思う。 去年は、France の Hector Protector によるデパート内を使ったハプニングが、 何も知らない店員や通りすがりの客を巻き込んでいく感じが良かったのだけど。 今年のハプニングは、France の Carnage Productions による _Le Gign_。 軍服というか特殊部隊の格好をして街中を動きまわるのだけど。大道芸のステージが 多く設けられている青葉通りで観たせいか、結局、ハプニングを観ているのが、 目当ての観客ばかりという感じになってしまい、ハプニング的な楽しみ方が 出来なかったようにも思った。全く事情を知らない人ばかりでもダメだと思うし、 そのバランスは難しいなぁ、と思ってしまった。 アクロバットや空中芸を優雅に観せるもの、といえば、France の空中芸男女 2人組 L'Epate En L'Air の _Mobile_ は、モビールと空中芸の組み合わせという 点では、大規模な Transe Express の _Mobile Homme_ もあったため、いささか 地味になってしまった感もあったが。日暮れのタイミングに合せての演技開始や、 Bauhaus 風の衣装など、それなりに楽しめるものだった。 音楽芸的なものとしては、Australia の Linsey Pollak による、調理器具や 野菜を使ったパフォーマンス。人参を削って笛を作って演奏するだけでなく、 サンプラーやデジタルループをフットペダルで操作しながら、調理器具を叩く音や 人参を齧る音、マウスパーカッションやスキャットから、リズムトラックを ライヴで組み立てて、コミカルにノリの良い演奏をする、というもの。 女性歌手のスキャットや自身の立てたノイズからライヴでトラックを組みたてる UK のミュージシャン Matthew Herbert のライヴパフォーマンスに、ちょっと コメディの要素も含めて大道芸にした、という感じだろうか。シリアスではない こういう使い方もいいなぁ、と思って、僕はとても楽しめたのだけれど、 いまいち客が付いてきていなかった。サンプラーやデジタルループを使っている せいか、観客に生で演奏しているといってもらえない、と、パフォーマーが言って いたし、ライヴエレクトロニクスを使ったライヴを観なれている人の方が楽しめる パフォーマンスかもしれない。 東京から近く毎年足を運んでいる野毛に比べて、静岡は野外劇・ダンス・空中芸と いったパフォーマーを海外から多く集めてきている。日本ではなかなか観る機会が 無いし、静岡まで行ったからには、と、ついそちらを観るのに力が入ってしまう。 日本のコメディ・ジャグリングやパントマイムのパフォーマーも、それなりに気に なっているのだが。後回しにしていたら3日に雨に降られて、結局ほとんど観られ なかった。特に、今年は活動を再開したジャグラー2人組 つぶつぶオレンジ を 観ることができなかったのは、ちょっと残念だった。 今年は十周年ということでもっと派手にやっているのかと思ったのだけれど、 屋台の数などはむしろ減っていたように感じた。パキスタン人がやっているらしい カレーの屋台でチャイを買ったとき、店主に、こういうときだからこそ楽しく やりたいね、というようなことを声かけられてしまったり。やはり、移動が大変に なっているのか、海外からの大仕掛けなパフォーマンスが初日は整備が間に合わず 公演中止になっているものが散見されたり。昨今の社会情勢の影響も垣間見えた ような気もした。 2001/11/4 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕